あなたの夢を暮らしを応援する
住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

完全分離型・木造二世帯住宅で ほどよい距離感と安心を

完全分離型・木造二世帯住宅で ほどよい距離感と安心を

DATA
設 計: T home一級建築設計事務所
     (担当/棚原彰悟)
敷地面積: 289.00㎡(約87.4坪)
建築面積: 92.30㎡(約27.9坪)
延床面積: 162.71㎡(約49.2坪)
用途地域: 第一種低層住居専用地域
構  造: 木造
完成時期: 2023年10月
建  築: T home 株式会社
     (担当/棚原彰悟)
電  気: 吉電設(担当/吉平剛)
水  道: 宮本工務店(担当/宮本豪)
キッチン: クリナップ株式会社

両親が住んでいた土地に二世帯住宅を建て替え。
1階・親世帯と2階・子世帯はそれぞれの好みを反映した仕上がりに。
国の補助金を活用した資金計画も参考になります。

週刊かふう2024年5月17日号に掲載された内容です。

完全分離型・木造二世帯住宅で ほどよい距離感と安心を

負担軽減の資金計画と理想をかなえた設計

 広い駐車場から階段を上がると、インターホンと表札が2つ並んだヒンプン(沖縄の伝統的な魔除けの壁)が現れました。Iさんの奥さまのご両親が暮らす土地に、新たに二世帯住宅として建て直したのが今回紹介するお宅です。
「別の土地を探しましたが、資金的な負担が大きくてなかなか手が出せないと思いました」とIさん。住宅ローンについても学びながら試行錯誤していくなか、知人を通して設計士の棚原彰悟さんを紹介してもらうことに。
「除湿をはじめ沖縄の住まいに求められる機能性について説明があり、国の補助制度『こどもエコすまい支援事業』を利用して快適な住まいが実現できることがわかりました」

 ZEHをはじめ木造住宅をすすめる棚原さんの住まいへの取り組み、「住む人を幸せにする家を作りたい」との志に共感したIさん夫妻は、木造2階建ての二世帯住宅を建てることにしました。「共働きなので、私たちが不在のときに両親宅で子どもを見てもらえる安心感があります」と話す奥さま。生活スタイルは異なりますが1階と2階でそれぞれの好みを反映してもらい、独立した2世帯でほどよい距離感と互いにサポートしやすい安心感が生まれました。

「鉄筋コンクリート住宅の大工職人をしている義父が『木造住宅もいいね』と変化してきたのが、私たちとしてはうれしいです」とIさん。「旧宅の撤去後に土地をならす作業や砂利運搬、防湿シートの取り付けなど、自分たちで手伝えることを実践しました」と回想するIさんは、楽しい思い出とマイホームへの愛着を手に入れた様子です。

完全分離型・木造二世帯住宅で ほどよい距離感と安心を

【2階は北欧風のインテリア】
独立させた夫婦のWICが相手の睡眠を妨げない

 玄関のある1階から階段を上ると壁にビルトインされた収納、そして洗面所や脱衣所、バスルームなどの水回りが配置されています。LDKに入る前に手洗いや入浴でさっぱりとできる、帰宅後の習慣を考えたレイアウト。通路の天井には外気処理換気システムが設置され、天井のダクトから各室の給気口を通して常に湿度を50%台に保っています。

 透明ガラスがはめ込まれたホールドアは天井までのハイドア。その向こうにリビング奥のスリットウインドーが見えて、空間の抜け感と広さを豊かに演出します。
「私は古着が好きで数も多く、ウォークインクローゼットがほしいと思っていました」とIさん。それを受けてインテリア好きな奥さまが「脱衣所や夫婦が共用するウォークインクローゼットの入り口はドアをつけず、上部をオシャレなアーチ状にしたいと思っていました」と説明します。北欧風の落ち着けるインテリアを目指して、壁紙の色を同じトーンの濃淡で配色するなど繊細な工夫が感じられます。

 勤務がシフト制のIさん夫妻は寝室とウォークインクローゼットを別室にしました。「家事をラクにする効果もありますが、互いの睡眠を妨げずに身支度できるよう配慮しました」と奥さま。自我を確立しつつあるお子さんにはリビング隣の個室を与えて、家族のコミュニケーションを密にしつつ幅広い分野への興味と成長をサポートしています。

完全分離型・木造二世帯住宅で ほどよい距離感と安心を

【1階は庭との一体感を演出】
開放的なLDKと回遊動線で広がり感のある空間へ

 庭とデッキテラス、LDKがつながるように広がる1階はたっぷりとした開放感に包まれています。
「私たちも出勤時間が異なるので、夫婦で個室を持つようにしました」と話すお母さま。
 大工職人のお父さまは、納戸やリビングのちょっとしたスペースに棚やハンガーラックを自作。暮らしやすさと自分たちに必要なアイテムを見極めて、仕上げに参加しています。
「娘夫婦が不在のときは、孫が降りてきてソファでくつろいでいます」とほほ笑むお母さま。
 Iさんたちの“冷めない”距離は、1階と2階に住むことで実現できたようです。

写真ギャラリー

完全分離型・木造二世帯住宅で ほどよい距離感と安心を

お客さまの暮らしと希望に寄り添い、沖縄の気候に適した住まいを自由設計で提案

T home株式会社 代表取締役 棚原彰悟さん(一級建築士 )

 大手建設会社からの独立を機に、お父さまが長年経営してきた「棚原内装」と事業統合して「T home株式会社」を設立し、その代表を務める棚原彰悟さん。設計から施工まで一手に担うことで、意図した設計を確実にカタチに仕上げる丁寧な住まいづくりを心がけていると話します。
「私自身のスタイルを追い求めるというより、お客さまの希望を丁寧にくみ取ってデザインし、さらに厳しい沖縄の気候のなかでも快適に過ごせる高気密・高断熱をベースとした家づくりを目指しています」と熱い抱負を抱いています。

”夏涼しく、冬は暖かい木造住宅”の利点は、断熱や防湿の機能をコストを抑えて実現できることにあると棚原さんはいいます。以前住んでいたアパートの湿気に悩まされていたIさんの体験をもとに、棚原さんは外気処理換気システムの導入を提案。高気密・高断熱の住まいに快適な空気環境をもたらす換気システムで、Iさん宅も入った途端にサラリとした空気感に包まれます。

 また「シンプルな空間を理想とし、無駄な空間は作りたくない」との信条もあり、Iさんの住まいではLDKがコンパクトにまとまった印象となるよう設計。収納は「壁に組み込んだちょっとした収納を心がけた」そうです。「あまりモノを置きたくない」というIさん家族の希望にも合致して喜ばれています。

 その一方、書斎コーナーには造作棚などは設けず、市販家具を組み合わせた収納スタイルを提案しました。「造作は作りすぎると変化に対応しにくい。部屋や空間によっては、家族や好みの変化に応じてカスタマイズできる収納法もオススメです」と棚原さん。「見た目のデザインは重要ですが、住み心地を担保されてこそのデザインです」と説明し、長く住まう家族の満足を引き出すコツを教えてくれました。
 1階のご両親の住まいは、お父さまが大工職人をしていることもあり、専門的な意見交換を活発に交わしたとのこと。「この地にもともとお住まいなので風向きや建物の配置など参考になるご意見をいただきながら、できるだけオープンにした空間計画のご希望にこちらからも回遊動線などをご提案しました」

 ZEH基準をはじめとする省エネ性能や長年の耐久性にも応える次世代の家づくりを、木造住宅を通して提案する棚原さん。「大工がいる設計事務所」という強みを活かして、沖縄の自然環境に適しつつ意匠を大切にした快適な住まいを発信しています。

設計・施工会社

沖縄市与儀1-7-7 ミルコマンション沖縄市与儀 グランパーク402

このカテゴリの記事