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琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 宗教が違ってもトートーメーに入れる?

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 宗教が違ってもトートーメーに入れる?

週刊かふう2022年4月8日号に掲載された内容です。

宗教が違ってもトートーメーに入れる?

Q:60代の姉は米軍の方と離婚しましたが、宗教はキリスト教のままです。本人は実家のトートーメーに入る気満々ですが、親戚のおばさんたちから「グソーでイエスとウヤファーフジがケンカするから絶対ダメ!」と拒絶されています。父は「大切な娘を無縁仏にしたくない」とOKの立場です。沖縄のしきたり的にはいかがなものでしょうか?(沖縄市・Oさん・60代・女性)

A:宗教とトートーメーは、沖縄の多くの方々が悩まれている諸問題の一つです。学術的・実践的な観点からご回答させていただきたいと思います。
 宗教のうち、世界三大宗教と呼ばれるキリスト教・イスラム教・仏教のほか、特定の民族・地域のみに信仰される宗教は民族宗教と呼ばれ、ヒンズー教・ユダヤ教・神道や琉球・沖縄の民間信仰(俗称)などが分類されます。ここで非常に興味深いのは、無宗教と思われがちな沖縄の民間信仰、つまり「沖縄のしきたり」を民族宗教の一つとする学説があるという点です。高い見識において、作法・心得のしきたりが学術的・実践的に構築されているがゆえ、このような学説があっても、さほど驚くことではないのでしょう。

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 宗教が違ってもトートーメーに入れる?

《トートーメーの宗教は?》
 さて、沖縄における信仰を語るとき、「トートーメーの宗教は何教ですか?」とのご質問をいただくことがあります。多くの沖縄の方々は、「沖縄は祖先(先祖)崇拝です!」とお答えされるのではないでしょうか。

 トートーメーをイフェー(位牌)と解釈するとき、久米三十六姓の方々を中心とする儒式位牌祭祀や、首里・小禄・那覇の僧侶の方々を中心とする仏式位牌祭祀などが行われることから、トートーメーには、儒教的な一面も仏教的な一面もあるとされ、宗教に対し、とても寛容であることが知られています。
 キリスト教に対しても同様で、故人さまを「トートーメーにウンチケーする(入れる)ことができる? できない?」の判断は、生前の宗教を問うこともあるかもしれませんが、実際には、チョウデーカサバイ(兄弟重合:亡くなられた兄弟が同じトートーメーに入ること)・チャッチウシクミ(嫡子押込:亡くなられた嫡子〈長男〉をトートーメーで蔑ろにすること)・タチーマジクイ(他系〈他家〉混合:トートーメーで違う家系が混ざり合うこと)・イナグタチクチ(女性立口:女性がトートーメーの初代になること)といった沖縄のしきたりを問うことの方が圧倒的に多くあります。つまり現状は、宗教より沖縄のしきたりが最優先されているということになります。

《トートーメーの『十字架(十)』の文字》
 今回のご回答としまして、将来、Oさんのお姉さまが実家のトートーメーに入ることができるかどうかは、お父さまもOKされていますので、可能であるとの結論に至りたいと思います。
 その根拠として、私が年間多数お参りさせていただくトートーメーに、『十字架(十)』の記載を多く拝見することができるからです。当院の『球陽寺(コザ本願寺)寺務・法務日誌』には、「大正4(1915)年の沖縄式位牌(トートーメー)に十字架(十)の文字あり」との記録があり、戦前からキリスト教を信仰されていた故人さまのトートーメーの記載方法であったことが残されています。

 将来、Oさんのお姉さまをトートーメーにウンチケーされるとき、お姉さまのお名前の上に十字架を表現する「十」の文字を記載することにより、キリスト教も沖縄のしきたりも、双方を尊重する、沖縄の心温まるジンブンにて問題解決ということになるのでしょう。
 親戚のおばさんたちのご意見もありがたいものです。「イエスとウヤファーフジがグソーでケンカする」など「○○と○○がグソーでケンカする」との表現は、沖縄では老婆心余ってのありがたいアドバイスなのでしょう。信仰する宗教は違えども、Oさんとお姉さまとお父さま、ご家族がお互いを思い合う心は一つですので、今後とも姉妹仲良く、ご実家のトートーメーを大切にご供養していただければと思います。

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