琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A シーミー(清明祭)のしきたり
週刊かふう2024年4月12日号に掲載された内容です。
シーミーでバーベキューはOK?
Q:どうも納得できないのは、わが家のシーミーのバーベキュー。みんながそれぞれ食材を持ち寄り、まるでビーチパーリーの雰囲気です。本当は、ウサンデーした重箱を食べないといけないですよね?(浦添市・Nさん・50代)
A:沖縄では、ウシーミー(清明祭の敬語)のとき、バーベキューされている方々が多いですよね。道すがら拝見することもしばしばです。
本来の観点から、ウシーミーは、家族・親族間の和合(親睦)との意味合いもあり、仲むつまじいこれらのバーベキューの光景は、その理にかない、時にはほほ笑ましくさえあると思います。
一方では、供物の象徴は重箱だといわれるユタなどの先生方も多くおられ、Nさんのおっしゃる通り、重箱をお供えする、重箱をお下げすることは、儀式・法要の中心的役割を担っています。優先順位から申し上げますと、重箱をお下げしていただきつつ、バーベキューも一緒に、ということになるのでしょう。
いろいろな方々のお話をお聞きするに、バーベキューの品々も紙皿にとりわけ、重箱と同様、一度はお墓のウヤファーフジにウサガミソーレ(お召し上がりください)とお供えされるのだとか。また、精進料理をイメージし、バーベキューのお肉を外し、野菜だけをお供えされることもあるそう。時代とともに多種多様なウシーミーに変化しつつあるようです。
重箱のお下げ方については、午前中には行わず、午後に入ってから。可能であれば、ウヤファーフジがお食事中かどうかを配慮して、ウサンデーサビラ(お下げいたしましょうね)とひと言お声掛けするなどします。
あえて申し上げさせていただきますと、ウシーミーは祭の意味合いを含む清明祭というウマチー(お祭)という考え方も存在しますので、沖縄でいうミーサ(新仏)というお葬式から三回忌(四十九日・一周忌の場合もある)の喪中の期間は、ウシーミーそのものを喪が明けるまでお休みしたり、行うとしてもバーベキューは喪が明けて以降が良いような気がいたしますので、ご参考にしていただければ幸いです。
イラスト/帰依剛龍
現代版のカミウシーミー(神清明祭)
Q:毎年、物知りのおばさんから「必ず、カミウシーミーをやってから自分たちのシーミーをやりなさい」と言われています。カミウシーミーをやるお墓は、「だいたい、識名あたりかな?」とは思いますが、今では誰もその場所を知りません。こんなとき、皆さんはどうやってカミウシーミーとシーミーをやっているのでしょうか?(本部町・Hさん・70代)
A:Hさん、ムートゥヤー(本家)・ナカムートゥ(中本家)がどのあたりにあるのか、また、そのムートゥヤーが本家本元の総本家からのムートゥヤーなのか、ワカイヤーシジ(分家筋)のムートゥヤーなのか、ある時点から意味不明になることはありますよね。
昔に比べ、ご近所付き合いは言うに及ばず、兄弟・親族間ですら疎遠になりつつある現代、ましてやムートゥヤー・ナカムートゥヤーに関連するカミウシーミーは行うことがさらに難しくなっていくのではと共感いたします。このようなとき、現代版のカミウシーミーの方法かとは存じますが、2点ご紹介させていただきたいと思います。
一つには、チネーバカ(家庭墓)というご自分たちのお墓でウシーミーを行うとき、カミウシーミーはムートゥヤー・ナカムートゥヤーという目上のウヤファーフジに近いチーシジ(血筋)であるという考え方から、仮にカミウシーミーにあたるお墓が識名にあるとすれば、ご自分たちのお墓から識名に方角を合わせて向き、先んじて識名にティーウサー(手を合わせる)するとのしきたりがあるとムンナレー(ご指導)いただいたことがあります。先に識名に向かってティーウサーを行うことで、カミウシーミーを行った後、ウシーミーを行ったことになるという考え方なのでしょう。
二つ目は、カミウシーミーは、清明の入りという旧暦3月の初めや上旬にかけて行われることが多い傾向があることから、その時期は遠慮して、ご自分たちのウシーミーは旧暦3月の中旬から下旬に行うとのしきたりがあるとムンナレーいただいたことがあります。
旧暦3月の初めや上旬にウシーミーを行わないこと=カミウシーミーを敬っているからという考え方になり、そこから拡大解釈として、旧暦3月の初めや上旬にカミウシーミーを行わないこと自体、先にカミウシーミーを行ったことに準ずるとの逆説的な考え方になるのでしょう。
今年でいいますと、旧暦3月中旬から下旬は、新暦ではゴールデンウィークの期間にあたりますので、そこで行ってもOKです。