琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A カビアンジとウサンデー、どっちが先?
週刊かふう2024年10月18日号に掲載された内容です。
カビアンジとウサンデー、どっちが先?
Q:毎回、お仏壇のカビアンジとウサンデー、どっちが先かでもめるわが一族です。早くカビアンジする派と早くウサンデーする派がいて、間に挟まる嫁の立場も考えてもらいたい気分です。本当のところ、どっちが正式なのでしょうか?(那覇市、Mさん、40代)
A:Mさまのご質問、沖縄のしきたりにおいて永遠のテーマですよね。お仏壇のウサギムンというお供え物をお下げするとき、カビアンジ(ウチカビをあぶること)が先か? ウサンデー(お供え物をお下げすること)が先か? 私もお参りさせていただきながら、両方のご意見を耳にし、目の当たりにします。
最終的には、押しの強い親戚のおじさん・おばさんのご意見に従うのが無難かな? とは思いますが……(これではご回答になりませんよね……)。沖縄のしきたりのありがたくも難しいところは、双方の考え方が違うとしても、お互いのご意見を否定せず、「地域性」「ナーメーメー(それぞれ)」と認め合い、肯定し合うところにありますので、初歩から学ぶ私たちには、どちらが正式なのか、判断にひと苦労することでしょう。
カビアンジ・ウサンデー・ハチケーシ
沖縄のしきたりでは、多くの場合、ウサギムンをいきなりウサンデーすることはないといいます。その理由は、もしかしたら、ウヤファーフジ(ご先祖さま)がウサギムンの食事中だったら失礼に当たるとか、簡単にウサンデーしたら、一番気をつけなければならないウグヮンブスクになってしまうとか、いずれにしても、これは沖縄のしきたりの一大事になってしまうといいます。
今回、カビアンジが先か? ウサンデーが先か? のご質問ですが、実は、これにハチケーシ(お供え物をお下げするとき、事前に大きめのお皿に取り分けること)も追加されます。つまり、三つどもえの選択になるということになります。以下、それぞれの長所をまとめてみましょう。
早くカビアンジする派
ご存じのように、沖縄ではウチカビ(カビジン)は、グソーのジン(お金)だと考えられています。お仏壇のウサギムンをウサンデーする前に、ウサンデーによって生じるウサギムンの不足分をグソーのジンで補うためカビアンジしたい……。少しでも早くウチカビをグソーに届けたい……。このような思いでの『早くカビアンジする派』なのかな? と想像しています。
また、カビアンジは儀式・法要の終了を意味するという考え方から、「終わったからお下げする」の通り、カビアンジしてからウサンデーすると解釈されることが多いようです。これはこれで一理ありますよね!
早くウサンデーする派
一方、『早くウサンデーする派』の皆さまの考え方も、現実的なご対応ではないかと思うところです。ウヤファーフジがゆっくりとお召し上がりになる時間まで待っていては、お参りしてくださった家族・親族が焼香を終え、自宅へと帰ってしまう。特に近隣や故人の友人・知人・会社関係の皆さまは、焼香が終わればすぐに席を立たれることも多く、ウサンデーを取り分けてお持ち帰りいただくことができなくなる。それなら、カビアンジを待つことなく、先にウサギムンをウサンデーして、皆さまへ取り分けお配りしたい、このような配慮なのではないかと思います。
もちろん、『早くウサンデーする派』の皆さまもカビアンジの大切さは存じ上げているはずですので、取り急ぎウサンデーして、頃合いを見計らい、あとからゆっくりとカビアンジするという流れだと思います。これはこれで一理ありますよね!
早くハチケーシする派
そしてハチケーシは、わかりやすくいいますとウサギムンの重箱のコピー、ミニチュアなのですよね。特に早くウサンデーする場合、ウサンデーするとウサギムンの「不足」が生じるので、重箱の一品ずつをお皿に取り分け、重箱と同じように配列することにより、ウサンデーしているけどウサンデーしていない、ウサンデーしていないけどウサンデーしているという、沖縄のしきたりが得意とする折衷案を醸し出しているのだと思います。
ウサンデーに先んじて行うのがハチケーシになりますので、『早くハチケーシする派』が存在するわけです。これはこれで一理ありますよね!
さて、Мさまには、どのしきたりも素晴らしい意味があることにお気づきいただけたかと存じます。今回は、どれを選択するのか宿題ということにさせていただきましょうね。