僕の好きな風景 第5回 フクギの並木道
フクギの並木道
沖縄本島で見る機会が少なくなった風景のひとつにフクギ並木があります。フクギは防風林として沖縄の島々で重宝されていました。台風の強い風からは、肉厚の密集した葉で家々を守り、風速が緩い風は通す(風速が小さいと抵抗が少ない)。フクギの内側に開放的で暮らすことに最適な環境を創り出していたと言っても良いでしょう。フクギは風を防ぐだけでなく、強い日射を遮る役割も担っていました。備瀬集落のフクギ並木は今でもその役割を体験させてくれます。スージ
(路地)と屋敷の境界線にびっしりと植えられたフクギの創り出す日陰は通行者にとってどれだけありがたいことだったことでしょう。
しかし、このフクギ並木も、ヒンプンと同じく、自動車の存在で存続が危うくなっているのではないでしょうか?
先日、仲間たちと歩いた備瀬のフクギ並木は、ちらちらする木漏れ日が白砂のスージに落ち、光の玉がゆらゆらと遊ぶ様は、この地でしか味わえない空間だと思いました。沖縄以外ではあり得ない風景なのです。この風景は、今後も残るのだろうか? よそ者は簡単に残ってほしいと願う。
しかし、一方で、住まい手にとっては、決していいことばかりではないと思います。実が落ちて、そのどこかガソリンにも似たような匂いは多くの人にとって愉快なものではなかったと察します。
一方で、この並木が好きで集まってくる人たちが多いのも確か。その思いが何らかの形で備瀬の佇(たたず)まいの保存と未来へつながればと願います。