基礎からわかる相続Q&A File.3 遺産分割調停の概要と進め方について
週刊かふう2022年2月18日号に掲載された内容です。
Q .遺産分割調停の概要と進め方について
昨年、母が亡くなってしまいました。母は遺言書などを作成していなかったようです。母名義の財産として、父が亡くなった際に母名義にした実家の土地建物の他、母が母方の実家から相続した土地がいくつかあります。私は就職を機に県外に出ており、兄は母と一緒に暮らしていて、妹は結婚し県内で生活しています。
母の法事の際に家族で父の財産の分け方について少し話をしたのですが、兄は自分が墓を継ぐことになるのだから、実家や他の財産の大部分は自分がもらうと言って聞かない状態でした。私も実家の土地建物は兄に継いでもらうということは納得したのですが、他の土地については誰がどの土地を取得するのか全然話がまとまりませんでした。母名義の一部の土地は比較的都会にあって立地も良く、私や妹もその土地の取得を希望しているので調整ができませんでした。最後には、兄が怒り出し私と妹に実家から出ていくようにととても強い口調で言ってきたので、怖くなって私と妹は退散した次第です。
私としては家族だけの話し合いでは解決が難しいと感じています。母の財産について、話し合いをしなければいけないとは思うのですが、法事の際の兄の態度から面と向かって話をするのは怖いです。調停というものがあると聞いたのですが、どのような手続きでしょうか。また、昨今のご時世から、今後、県外移動して実家に行くことが難しい時期もありそうですが、私の住んでいるところで調停を進めることはできないのでしょうか。
A.当事者間の話し合いでの遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所で遺産分割調停をすることが考えられます
誰かが亡くなった時に、その方が生前持っていた財産(遺産)を各相続人で分けることになります。
今回の相続人は、お母さまの子である相談者とお兄さん、妹さんの3人となります。お母さまが遺言書を作成していないので、各相続人の法定相続分は3分の1ずつです。これは長男であるとかお墓を継ぐとかは関係ありません。
この相続人3人で遺産をどのように分けるかの話し合い(遺産分割協議)をすることになり、それがまとまれば遺産分割協議書を作成することになります。しかし、本件では実家以外の土地について、誰がどの土地を取得するのかについては相続人間で意見の隔たりが大きく、当事者だけの話し合いで遺産分割協議をまとめるのは難しそうです。
遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることが考えられます。遺産分割調停では、2人の調停委員が間に入り、話し合いを進めていきます。話し合いといっても、相続人全員が同じテーブルについて対面で意見を言い合うのではなく、調停委員2人と各当事者が順番に話をし、調停委員に自分の意見をお話しします。同じ意見の相続人とは一緒に話をすることがありますが、考えが違う相続人と同じ部屋で話をすることはありません。意見の違う当事者では、待合室が別になっており、裁判所へ行く時間もずらしてくれたりしますので、相手方と顔を合わせる確率はかなり低いと思われます。調停委員は中立の立場で交互に関係者の話を聞き、各当事者に資料の準備要請をしたり提案を行ってくれます。調停は、第1回期日から、およそ月に1回程度のペースで調停期日が設定されます。
調停は、原則として亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行うことになり、相談者が自分の住んでいる県の家庭裁判所に調停を申し立てることはできません。ただ、必ず毎回家庭裁判所に出席しなければならないというものではなく、調停委員会の判断で電話での会議出席が認められることがあります。そのため、この案件でもコロナ禍など社会情勢を考慮して電話会議の方法での出席を求めることも考えられます。
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