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基礎からわかる相続Q&A File.11 賃貸人が亡くなり、相続人が不明な場合について

基礎からわかる相続Q&A File.11 賃貸人が亡くなり、相続人が不明な場合について

週刊かふう2022年9月16日号に掲載された内容です。

Q.賃貸人が死亡した場合について、賃借人として法的にどのような義務を負うのか、どのような対応が考えられますか。

 私は、賃借した土地(借地)の上に家を建てて、そこで暮らしてきました。地代は、年に1回地主さんの口座に振り込んでお支払いしていました。地主さんは近所の方で、お会いすれば挨拶をする程度の関係ですが、詳しい家族構成等は知りませんでした。

 ところが、今年の地代を地主さんの口座に振り込もうとしたところ、口座が凍結されていたようで、送金することができませんでした。
 実は地主さんが最近亡くなったらしく、その後、地主さんの長男と名乗る方から連絡があり、自分が土地を引き継ぐことになったので、今後の地代はその方の口座に振り込むよう言われました。ところが、さらに地主さんの次男さんと名乗る方からも連絡があり、誰が賃貸中の土地を相続するかは決まっていないので、1人だけに地代を支払うことはやめてほしいとの連絡がありました。

 私は、地代の支払いをどうすれば良いのかわからず困っています。最近、相続登記が義務化されるという話を聞いたのですが、地主さんの土地について相続登記がされるのを待って対応すれば足りるでしょうか。

A.もし一部の相続人が自身への地代支払いを求めてきた場合は、その方が本件土地の相続人であるかを確かめるために、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を確認させてもらうよう求めるべきでしょう。

 相談者が地主さんと土地の賃貸借契約を締結していたところ、土地の賃貸人である地主さんが亡くなっていますが、賃貸借契約はそれで終了するわけではありません。亡くなった地主さんの賃貸人としての地位が土地を相続する相続人に当然に承継されます。

 地主さんの賃貸人としての地位を相続するのは、本件の土地を相続した相続人ですが、現在は、誰が本件の土地を相続したかわからない、あるいは誰が相続するのか協議中で決まっていない状況です。
 まず、このような場合でも、相談者が地代を支払わなかった場合、賃貸借契約上の義務である賃料を支払わなかったものとして取り扱われてしまいますので、賃貸借契約を解除されてしまう可能性があります。したがって、地代は支払う必要があります。

 遺言がない場合の賃料の法的な取り扱いとしては、遺産分割協議が成立するまでの賃料については法定相続人間で法定相続分に応じて按分となり、遺産分割協議が成立した後の賃料については遺産分割協議で当該不動産を取得した相続人が取得することになります。
 もし一部の相続人が自身への地代支払いを求めてきた場合は、その方が本件土地の相続人であるかを確かめるために、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を確認させてもらうよう求めるべきでしょう。遺言の場合は、遺言書と検認(遺言書が存在することを家庭裁判所で確認する手続き)がなされていることを示す書類、本件土地を相続した相続人の身分証明書の確認を求めるべきでしょう。

 一方、賃貸人の相続人から資料の提出がない場合に、賃借人が賃貸人の相続関係を正確に把握して支払うことは現実的ではありません。
 相談者がおっしゃっているように、相続登記を義務化する法律が成立しましたが、相続登記の義務化は令和6年4月1日からのスタートで、さらに相続登記の申請については3年間の猶予期間があり、早期に相続登記を通じて相続人を把握することができるかは見通しが立たない状況です。
 このような場合、相談者が「供託者」となり供託所(法務局)に地代を提出する手続きをとることで、地代を支払った扱いとなりますので、地代の支払期間内にこの手続きを取るべきでしょう。

基礎からわかる相続Q&A File.11 賃貸人が亡くなり、相続人が不明な場合について

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