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基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.5 相続人の範囲と死後認知について

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.5 相続人の範囲と死後認知について

週刊かふう2023年5月19日号に掲載された内容です。

 

Q. 内縁の夫の死後、戸籍上の妻から、戸籍上の妻とその子が相続人であるので家を明け渡すように求める文書が届きました。私は、夫が亡くなった後も、この家で子どもを育てていきたいと思うのですが、どうすればいいでしょうか。

 私の夫(パートナー)は、妻との間に子が生まれた後、妻と不仲になって長年別居状態となり別々に生活していました。戸籍上では夫婦のままですがもはや夫婦としての形態はなく、夫から妻に離婚を求めましたが、受け入れられなかったとのことです。
 その後に私と出会い、夫婦同然の生活をするようになり子どもにも恵まれました。そんな状況もあってか、相変わらず夫と戸籍上の妻との関係は悪く、夫だけではなく夫の親兄弟とも度々トラブルとなっているとのことでした。そのような話を聞いていましたので、私は夫との子については、認知の手続きをせずにしておいてもらっていました。それでも、夫は親として子どもを育ててくれました。
 そんな中、急に夫が倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいました。急なことでしたので、夫は遺言書等も作成しておりません。夫は、夫の母の土地の上に居住用建物を所有しており、そこで私たちが生活しています。
 ところが、夫の死後、戸籍上の妻から、戸籍上の妻とその子が相続人であるので家を明け渡すように求める文書が届きました。
 私は、夫が亡くなった後も、この家で子どもを育てていきたいと思うのですが、どうすればいいでしょうか。


A.いろいろな事情や考えで、夫婦としての実体を備えながらも、あえて籍を入れずに生活していく方たちもいらっしゃいます。このような夫婦関係を内縁と呼びますが、婚姻に準じて扱われる場面とそうではない場面があります。また、婚姻関係にない男女間の子について、相続の場面で、手続きをとることを考えなければならない場合があります。それらについて見ていきましょう。

 相談者とパートナーとの関係のように、婚姻届を役所に提出していないだけで、事実上の夫婦としての社会的実体がある男女の関係を内縁と言います。相談者は、相談者のパートナーの内縁の妻にあたることになります。
 内縁の妻には、内縁の解消の場面(法律上の婚姻の場合で言えば、離婚の場面に対応します)では離婚に準じた権利が認められていますが、相続の場面では婚姻に準じた権利義務は認められていません。したがって、内縁の妻である相談者には法定相続分は認められません。そのため、本件では相談者の子について相談者のパートナーの相続人になるかを検討する必要があります。
 
 婚姻関係にない男女間に生まれた子について、母子関係は分娩(ぶんべん)の事実によって当然に生じますが、父子関係は認知の手続きをすることによって生じます。そのため、今回の相談者のように、父親の認知がされていない子が父親の相続権を得るためには、認知の手続きを経る必要があります。
 認知の手続きで一般的なのは、父親が存命中に自分の意思で自分の子どもであると認めて認知届を市町村役場に提出する任意認知の手続きですが、この手続きは父親が既に亡くなっている本件ではとることができません。

 今回のケースの場合、父親の死後に認知の訴えを提起するいわゆる死後認知の手続きをとるべきと思われます。本来であれば父親を相手として訴訟をするのですが、もう亡くなっているので代わりに検察官を被告とすることになります。
 この死後認知の手続きが認められると、生まれた時にさかのぼって父親の子どもであったとみなされて相続権が発生しますので、相談者とパートナーとの子は、パートナーの相続人として遺産分割協議に参加することになります。そこで、現在居住している建物についての相続を求めることが考えられます。また、将来的にはパートナーの母の相続が発生したときにも、相続人としての地位を取得することができます。
 もっとも、認知請求が裁判で認められるまで、戸籍上はパートナーの方の相続人は戸籍上の妻子のみとなりますので、早めに手続きを進めることをお勧めします。


基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.5 相続人の範囲と死後認知について

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