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基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.8 相続不動産の評価と遺産分割協議の錯誤について

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.8 相続不動産の評価と遺産分割協議の錯誤について

週刊かふう2023年8月18日号に掲載された内容です。

 

Q. 母の遺産を兄と私とで相続しました。兄の説明では、母の遺産は自宅土地建物3000万円と預貯金5000万円ということでしたので、私は預貯金4000万円を受け取り、兄は自宅土地建物と預貯金1000万円を受け取ることで合意しました。しかし、兄から説明された自宅土地建物の評価額が、市場価格で見るとかなり異なっていることがわかりました。兄が取りすぎているようで、どうも納得できません。

 私の母は夫である父に先立たれてから一人で暮らしていました。父が亡くなったときは、私と母と兄で話し合い、母が全ての遺産を相続することにしました。その母も昨年亡くなり、相続人は兄と私だけです。
兄の説明では、母の遺産は自宅土地建物3000万円と預貯金5000万円ということでしたので、私は預貯金4000万円を受け取り、兄は自宅土地建物と預貯金1000万円を受け取ることで合意しました。
ところが、兄が言っていた自宅土地建物の3000万円という評価は、父が亡くなった頃の固定資産税評価額というもので、近年開発が進んでいることもあって市場価格で見ると敷地だけで1億円はするのではないかと不動産業者から聞きました。
兄が取りすぎているようで、どうも納得できません。あらためて話し合うための方法はないでしょうか。

A.不動産の評価について、さまざまな評価方法があります。相続の各場面でどのような評価や数字が使われるのか確認していきましょう。また、相続が発生した場合には、相続人による遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議が錯誤により取り消される場合についても見ていきましょう。

 不動産の評価額としては、固定資産税評価額、路線価、公示価格、時価などがあり、それぞれに制度上の目的が異なっています。
 固定資産税評価額は、各市町村が算定する固定資産税の基準となる価格で、路線価は相続税や贈与税を算定する際の基準となる価格です。物件の状況や景気にもよりますが、固定資産税評価額は時価よりだいぶ低くなるケースがあります。

 そして、遺産分割協議は、全相続人の合意により行われるもので、個々の遺産をどのように評価するかについても全相続人の合意によって決めることが可能です。ただ、不動産の評価方法の選択について、相続人間で合意が得られず、事案が家庭裁判所に持ち込まれた上、それでも評価方法について合意が無い場合は、家庭裁判所において時価が採用されることになります。

 本件の場合において、法定相続人全員が自宅土地建物の評価額を3000万円とすることを認め、これを前提として全産の分割協議を成立させた場合には、原則としてその遺産分割協議は法律上有効でありこれを覆すことはできません。ただし、先の遺産分割協議を無効とし、遺産分割協議をやり直す可能性も全く無いわけではありません。遺産分割協議の錯誤取り消しを裁判所で主張するという手続きがあります。

 過去の裁判例では、遺産分割協議が錯誤により無効となる場合について、遺産分割協議の全部を無効とするのでなければ、著しく不当な結果を招き正義に反する結果となる場合に無効となることを前提に判断したものがあります。

 本件のケースで遺産分割協議の錯誤があると言えるためには、

(1)あなたが遺産分割協議時点で自宅土地建物の評価額が3000万円であると認識し、それを他の相続人に明確に示して本件遺産分割協議を成立させたこと

(2)後日当該自宅土地建物の遺産分割協議成立時点での真の評価額が3000万円以上であることが判明したこと

(3) もしも(1)の協議成立時に(2)の事実をあなたが知っていたならば、(1)のような遺産分割協議を成立させなかったことが、客観的に明らかであることが必要と思われます。

 これらを立証することは一般的には容易ではありませんが、錯誤取り消しを主張できるのは5年間ですので、それをふまえて遺産分割協議の錯誤取り消しを主張するか検討されてください。

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.8 相続不動産の評価と遺産分割協議の錯誤について

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