基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.9 養子の相続権と半血の兄弟姉妹の相続分について
週刊かふう2023年9月15日号に掲載された内容です。
Q..叔父が亡くなり、叔父の妹である叔母と私の3人の兄弟が相続をすることになりました。しかし、弟は妻方の婿養子になり、叔母は叔父とは母が異なる異母兄弟となります。この場合、どのように遺産を分けることになるのでしょうか。また、叔父は賃貸を所有していましたが、この家賃の口座が凍結されてしまい、借り主は家賃を供託するようになったと聞いています。この受け取りについてもどのようにするのがよいでしょうか。
私の叔父は高齢で病気がちだったこともあって、長らく入退院を繰り返していましたが、昨年亡くなってしまいました。叔父は結婚しておらず、子どももいません。叔父の葬式は甥にあたる私が手配しましたが、叔父の遺言書などはないと思います。叔父の兄弟は、兄である私の父の他、母違いの妹(私から見ると叔母)がいますが、私の父は既に他界しています。私の兄弟は兄と私、弟の3人ですが、弟は理由あって奥さん方の婿養子となっています。
叔父は実家の土地建物の他に、賃貸中の不動産を有していました。この不動産の家賃は、毎月叔父の口座に振り込まれていましたが、叔父が亡くなったことで口座が凍結されてしまったようです。そのため兄が借り主に自分に払うように求めたとのことでしたが、相続人かわからないということで、借り主は家賃を供託するようになったと聞いています。
家賃の受け取りについて、私は弟や叔母の了解を得る必要があると思っていますが、兄は養子にいった弟は関係ないと言っています。また、叔母さんからは叔父さんの遺産についてもらえる分はもらいたいとの連絡が来ています。
叔父さんの不動産の処分や供託中の家賃について、私と兄で決めることができるのでしょうか。また、叔母さんとも含めて、どのように遺産を分けることになるのでしょうか。
A.さまざまな事由で養子縁組を行うことがありますが、その場合でも実親の遺産を相続できるのでしょうか? いわゆる婿養子として養子縁組した方が、実親の相続の際にどのような立場になるのかについてご説明します。また、異父兄弟や異母兄弟の場合の、相続における立場についても見ていきましょう。
本件では、叔父さんの相続において、相続人は叔父さんの妹(相談者から見て叔母さん)、相談者、相談者のお兄さんと弟さんの4人です。
弟さんはいわゆる婿養子となっているとのことですが、この際には通常の養子縁組が行われます。通常の養子縁組について定めた民法には、実父母との関係を消滅させるということは規定されていません。養子となった以上は、実親の相続には関係ないと誤解されている方もおりますが、実親との法律上の親子関係を維持したまま養親との間で新たに法律上の親子関係を生じさせることになりますから、養子となっても実親の相続人となります。叔父さんの相続については、弟さんも含めて4人で相続のお話をする必要があります。そして、遺産の相続分についての結論としては、叔母さんが3分の1、相談者を含めて相談者の兄弟がそれぞれ9分の2となります。
あらためて解説すると、叔父さんに妻子がなく、両親も亡くなっていますから、本来の相続人は叔父さんから見るとその兄弟になります。叔父さんの兄である相談者の父が亡くなっていますので、相談者の父の相続分は相談者らが代襲相続人として引き継ぐことになります。
そして、法律上、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とされています(民法900条4号ただし書き)。叔父さんと叔母さんは母親違いの兄妹になるので、叔母さんの相続分は、叔父さんと両親とも同じ相談者の父の相続分の2分の1となります。これを計算すると、先に示した相続分となります。
加えて、本件では家賃が供託されているとのことです。今回のケースで供託された金銭を受領するためには、法務局に対して供託金払い渡請求書や実印と印鑑証明書の他に、誰が供託された家賃を取得するのかを決めた遺産分割協議書を用意して提出することになります。
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