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基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File5 相続土地国庫帰属制度について

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File5 相続土地国庫帰属制度について

週刊かふう2024年5月17日号に掲載された内容です。

 

Q.5年ほど前に父の遺産を相続しました。遺産は複数の不動産があり、その中に、へき地にあって利用していない土地もありました。最近、国が相続財産を引き取る制度ができたと聞いたのですがどのような制度なのでしょうか。私が相続した利用していない土地も引き取ってもらうことが可能なのでしょうか。

 私は、5年ほど前に父の遺産を相続しました。父の遺産は実家も含めて複数の不動産があったのですが、相続財産の中には、へき地にあって利用していない土地もあり、正直に言うと、私もその土地が現在どうなっているのかわからない状態です。
 そうした土地がある地域の一部で土砂崩れが発生したと聞き、このまま使わない土地を所有しているのが不安になってきました。私もだんだん高齢になってきましたので、使わない不動産のことで子どもたちに迷惑をかけたくないと思うようになりました。
 そんな折、国が相続財産を引き取る制度ができたと聞きました。
 どのような制度なのでしょうか。私が父から相続した利用していない土地も引き取ってもらうことが可能なのでしょうか。

A.相続により、他の遺産と一緒に所有を望まない不動産も相続することがあり得ます。不動産を所有している以上、管理責任が生じ、思わぬトラブルが発生した場合は対応を求められます。土地については、売却等が難しかったとしても、令和5年から始まった相続土地国庫帰属制度により処理することができるかもしれません。どのような制度か見ていきましょう。

 2023(令和5)年4月27日から、相続土地国庫帰属制度が開始しました。
 相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度です。相続放棄では全ての遺産を放棄することになるのと違い、相続財産の一部の土地についてのみ、この制度を利用し、他の遺産は通常通りに相続することができます。

 この制度が創設された背景としては、相続を契機として土地を望まず取得した所有者の負担感、管理の不全化があり、2023年以前に相続した土地についても相続土地国庫帰属制度の対象となります。

 手続きの流れとしては、
①土地の所有権を取得した方が法務大臣に対し、土地の所有権を国庫に帰属させることについて申請を行う
②法務大臣(法務局)による要件審査・調査が行われる
③法務大臣が要件に該当すると判断すると土地の国庫への帰属が承認
④土地の国庫帰属の承認を受けた方が10年分の土地管理費相当額の負担金を納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属

 なお、相続土地国庫帰属制度の承認申請手続の標準処理期間は8カ月と定められています。

 相続土地国庫帰属制度を利用するメリットとしては、売却することもできない土地を手放すことができることの外、土地の引き取り手が国であることから引き取り後のトラブルがなく安心できる点があげられます。使わない不動産のことで子どもたちに迷惑をかけたくないという相談者の希望に合ったものと思います。

 もっとも、相続土地国庫帰属制度はすべての土地について利用できるものではありません。却下事由としては、建物がある土地や担保権等が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地等が定められています。
 また、一定の勾配・高さの崖がある土地、土地の管理・処分を阻害する有体物が地上や地下にある土地、その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地についても、国が引き取ることができないとされています。

 本件の土地の状況はわかりませんが、その地域の一部で土砂崩れが起きたとのことですから、本件の土地についても土砂崩れのおそれがある場合は、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地に該当してしまい、相続土地国庫帰属は使えないかもしれません。

 相続土地国庫帰属制度については、弁護士等法律の専門家に相談することももちろんできますし、法務局(本局)の登記部門での相談(事前予約制)も行われています。

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File5 相続土地国庫帰属制度について

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