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知っておきたい 相続の基礎Q&A File.5

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.5

週刊かふう2020年3月20日号に掲載された内容です。

養子縁組がからむ相続について

家業や財産を特定の人に受け継がせるため、養子縁組がなされることがあります。娘婿を養子とする養子縁組を行うのがその典型ですが、娘夫婦が離婚した時に自動的に関係が切れるわけではありません。養子縁組が相続にどのように影響するか、関係を終わらせるためにどのような手続きが考えられるか見ていきましょう。

Q.私は以前から妻とともに農業を営んでおりましたが、妻には先立たれてしまいました。

 子どもは娘が一人です。妻名義の財産は特になかったのですが、私は自宅の土地建物の他、父の代からの畑を所有しています。娘は学校を卒業後、会社員の方と結婚したいと言い出しました。私は、ゆくゆくは娘に家と家業の農業を継いでもらいたいと話し、娘夫婦も了承してくれたので、娘の夫に婿養子に入って貰うかたちで、娘の夫と養子縁組をしました。娘は、結婚してから農業を手伝うようになりました。孫も生まれ、これまではおおむね円満な関係を築けてきたと思います。
 しかし、私も高齢になってきたので、婿にも農業を手伝ってもらい、少しずつ農業を習得してほしいと言ったところ、婿は態度を急変させて自分は農業はやらないと言ってきました。
 最近では、娘と婿との関係も険悪になってきてしまい、頻繁に夫婦喧嘩をしては、娘が孫を連れてうちに避難してくるようになりました。娘は離婚を真剣に考えているようです。このままでは私の死後、畑や自宅の土地建物について、娘が離婚しても婿も相続することになるのでしょうか。娘だけに相続させるにはどうすればいいでしょうか。

A.お察しのとおり、相談者は婿さんと養子縁組をしておりますので、現状では、相談者が亡くなられた場合には娘さんとともに婿さんが相続人となります。

これは、娘さんが婿さんと離婚した場合でも同様です。結婚・離婚と養子縁組は別の手続きだからです。
 相談者として考えられる手続きとしては、離縁の手続きを進めることが考えられます。離縁とは、養子縁組によって生じた養親子関係を終了させる手続きです。
 離縁をするための方式としては、①協議離縁をする方法、②調停離縁をする方法、③裁判上の離縁をする方法の三つが主な3本柱になっています。
 まず、①協議離縁をする方法は、養子縁組をした当事者の協議によって離縁することで、養子縁組をした当事者、今回は相談者と婿さんとの協議により離縁届を作成し、役所に提出する方式です。婿さんとの協議がまとまれば、これが一番良い方法です。ただ、協議がまとまらなければ離縁届を作成することはできないので、例えば婿さんが離縁を承諾してくれない場合などは協議離縁をすることはできないことになります。
 次に、②調停離縁する方法は、家庭裁判所で行う離縁調停において、当事者本人が調停期日に離縁に合意した場合される方式です。調停離縁は、家庭裁判所に離縁を求める家事調停の申立書および添付資料等を提出することでスタートします。申立書の形式がわからなければ、家庭裁判所の窓口に複写式の申立書が置いてあるかもしれませんので、それを利用することも考えられます。離縁調停においても当事者本人が離縁に合意しなければ成立しませんが、調停では第三者の調停委員たちが間に入って話し合いを進めることになるので、当事者だけで話をするよりも冷静な意見交換が期待できます。
 最後に、③裁判上の離縁をする方法は、離縁訴訟を提起して裁判上の離縁原因が裁判上認められ、特に棄却すべき事情がないときに、判決によって当事者を離縁させる手続きです。離縁原因とは、法文上「縁組を継続しがたい重大な事由があるとき」と規定され、裁判例上は「養親子としての生活関係を維持することができず、その回復が著しく困難な程度に破綻したとみられる事由があるとき」と判断されています。実は、かなり昔の裁判例で、娘夫婦が離婚したということだけでは離縁原因として足りないと判断したものがあるので、裁判上の離縁原因を主張する際はよく考えたほうがいいでしょう。本件の場合、農業を継がせることについての事実経緯や夫婦喧嘩の内容などを主張していく必要がありそうです。
 なお、離縁調停をせずに離縁訴訟を提起することはできません。

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.5

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