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知っておきたい 相続の基礎Q&A File.7

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.7

週刊かふう2020年4月17日号に掲載された内容です。

配偶者居住権について

平均寿命が延び、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が長期間にわたり生活をすることも多くなりました。その際には、残された配偶者が住み慣れた住居で生活を続けるとともに老後の生活資金として預貯金等の資産も確保したいと希望することも多いと思われます。そのために配偶者居住権の制度を利用することが考えられますので、どのようなものか見ていきましょう。

Q.先週、夫が75歳で亡くなってしまいました。

夫は、先妻との間に娘をもうけましたが、先妻と40年ほど前に死別し、夫と同級生だった縁で私と30年前に再婚しました。再婚してからは、私と夫は、夫が35歳の時に建てた夫名義の家で2人で生活してきました。
 夫と前妻の娘は、私とは折り合いが悪く、ほとんど家に顔を出すこともありませんでした。
 先日、娘から私のところに連絡があり、家の土地建物の評価額は4000万円程度であるので、家の評価額の半額を支払うか、家を売って売却代金を分割するよう求められました。
 私としては、30年もこの家で生活して来てもう高齢になってきましたので、今後もここで生活したいと考えております。もっとも、私名義の貯金はほとんどなく、夫名義の貯金約1000万円を少しずつ切り崩して生活している状況でしたので、娘にお金を支払うのはとても無理なことで、夫の貯金をある程度取得できないと、生活が立ち行かなくなってしまいます。
 私がこのまま家に住み続け、生活費のための貯金も相続することはできないでしょうか。

A.今回、夫は遺言書を作成していないとのことですので、相談者の法定相続分は2分の1で、娘さんも同じく2分の1の法定相続分を持っている状態です。

 夫の遺産が4000万円の評価の家の土地建物と1000万円の預金ということであれば、1人当たりの相続分は2500万円ということになります。相談者が評価額4000万円である家の土地建物の完全な所有権を取得するとすれば、相談者が法定相続分より1500万円多い財産を取得することになり、娘さんが法定相続分に応じた財産の相続を希望する限り1500万円を娘さんに支払うなどして調整する必要が生じるでしょう。
 今回のケースでは、相談者が完全な所有権を取得するのではなく、配偶者居住権を取得し、娘さんが配偶者居住権の負担付の所有権を取得するという内容での遺産分割を目指して協議を進め、協議がまとまらなければ、調停や審判を利用していくことが考えられます。
 配偶者居住権とは、残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合で、一定の要件を充たすときに、被相続人が亡くなった後も、配偶者が、賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利です。あくまでも配偶者が住み続ける権利なので、売却したり所有者に無断で賃貸したりすることはできません。完全な所有権を、配偶者居住権と配偶者居住権の負担付所有権の二つに分割する、というイメージです。
 相談者が家の配偶者居住権を取得し、娘さんが配偶者居住権の負担付の所有権を取得するという遺産分割協議ないし調停がまとまることのメリットは、完全な所有権に比べて配偶者居住権の評価金額は低いので、相談者が配偶者居住権以外にも財産を相続しやすくなることにあります。
 配偶者居住権の制度は始まったばかりなので、配偶者居住権の財産的価値の評価方法は固まっていませんが、土地建物の現在価格から、建物の耐用年数、築年数、法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上、これを現在価値に引き直して求める負担付所有権の価格を差し引くことで算定する考え方があります。
 本件のケースでは、配偶者居住権の算定は1500万円前後になると思われますので、相談者が配偶者居住権を取得するのであれば、貯金についても相続できる可能性が十分あります。
 相談者が配偶者居住権を取得した場合、配偶者居住権を取得した旨を登記することができます。また、建物の通常の必要費は配偶者居住権者が負担することになるので、建物の固定資産税などは支払う必要があります。

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.7

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