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よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.3

よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.3

週刊かふう2018年7月27日号に掲載された内容です。

法人化により相続のトラブルは解消されるのか?

今回のテーマは財産の法人化です。すなわち個人で所有する財産を法人の管理などに移転することで、相続税や所得税の節税対策として有効な場合もありますが、相続トラブル解消の手段としては得策でない場合もあります。それでは、法人化について詳しく解説していきましょう。

Q.法人化すれば相続のトラブルを解消できるのでしょうか。

 私には妻と二人の子供(長男、次男)がおり、アパートを所有しています。相続時に子供同士で財産争いが起こらないか心配しています。
 その対策として、法人化の話しを耳にしたことがあるのですが、法人化すれば相続のトラブルを解消できるのでしょうか。

A.法人化したからといって相続トラブルが解決されるわけではありません。

 法人化とは、例えば、「個人のアパート経営者が会社を設立し、その会社にアパートを移転し、経営を行なっていくような方法」をいいます。
 結論から申しますと、相続税や所得税の節税対策として有効なケースもありますが、法人化したからといって相続トラブルが解決されるわけではありません。
 相談者のように、法人化すれば相続トラブルを解消できると思われている方が多いようです。しかし、法人化を行なった場合、経営者は「アパート」を手放す代わりに「会社(厳密には、株式)」を得ることになります。結局、対象がアパートから会社へ代わっただけで、「誰が会社を承継するのか」という問題は変わりません。

解説1 法人化について

 法人化は、大きく次の①及び②の二つの段階により行われます([図解1]参照)。①まず、会社を設立し、「株式」を取得します。次に、②「不動産」を移転(売買)し、「売買代金」を受け取ります。

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-不動産の名義変更-
不動産の所有権移転は、単に名義を変更すればよいというものではなく、個人と会社で売買契約を結ぶ必要があります。不動産を購入した場合には、購入代金の支払義務が発生し、不動産取得税(固定資産税評価額の3~4%)や登記費用がかかります。一方、不動産を売却した場合には、売却代金を受け取る権利を有しますが、所得税がかかる場合があります。

解説2 誰が株式を所有するのか

 会社の経営者たる取締役は、株主総会において議決権の過半数を以て選任されます。そのため、法人化にあたり「誰が株式の過半数を所有するのか」という点は重要なポイントとなります。ご質問のような場合、大きく二つのケースが考えられます。

《ケース1》アパート経営者本人が会社を設立した場合(Aと同様のケース)
この場合、アパート経営者が株主となり、株式やアパートの売買代金を受け取ります。
このケースでは、承継する財産が「アパート」から「株式及び売買代金」に代わるだけで、誰がこれらを承継するのかという問題はなくなりません。

《ケース2》子供が会社を設立した場合
この場合は、(ケース1)とは異なり、子供が株式を所有することになります([図解2]参照)。このケースによると、一見財産が子供へ上手く承継されたかのように思えますが、株式の所有の仕方次第では、問題が生じる可能性があります。

 株式の所有パターンには、次の二つがあります。
 ①兄弟のいずれか一方が、全て の株式を所有する
 ②兄弟で株式を所有する

 事前にご家族で話し合った上で、①のようにできれば理想的です。一方②については、兄弟間の関係が良好のうちはよいのですが、そうでなくなった場合には、意見の相違が生じ、ゆくゆくは経営権を巡る問題にまで発展してしまうかもしれません。
 また、[図解3]のように、アパート経営者の孫の代になって、株式がさらに分散して相続され、株主が増えた場合にはなおさら問題が複雑化することでしょう。

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解説3 まとめ

 相続などの財産の承継に関しては、人間関係や感情などが絡んでくるため、スムーズにはいかないことも多々あるでしょう。不動産であっても、株式であっても、結局、「財産を誰が承継するのか」という問題は残ります。
 関係者全員が納得できるような形で財産の承継ができるように、十分にご家族で話し合いを重ねていくことが必要です。

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