住居空間と宿が 同居する おもてなしハウス
- DATA
- 所在地:読谷村
- 家族構成:夫婦、子ども3人、孫1人
- 設計・建築:株式会社NDアーキテクトン
(担当:大城貢・比嘉実美) - 敷地面積:272.22㎡(約75.00坪)
- 建築面積:149.69㎡(約45.20坪)
- 延床面積:412.22㎡(約124.60坪)
- 用途地域:未指定地域
- 構造:RC壁式構造3階建て
- 完成時期:2020年6月
- 構造:Lifetect(宮里尚志)
- 建築:株式会社 沖秀建設(池原元勝)
- 電気:有限会社 開成電設(玉那覇裕也)
- 水道:三建設備 株式会社(山内昌)
- キッチン:株式会社 共立創建(東江しのぶ)
1階は訪れる人が集えるようにBBQテラスや石庭などを配置した開放的なパティオ。
2階はLDK、寝室、そして和室が流れるようにつながる居住空間。3階は6室13人が泊まれる宿泊施設「Bio top」。
集う・住まう・泊まるが三位一体となったHさん宅。さまざまな交流を楽しんでいます。
※週刊かふう2020年10月23日号に掲載された内容です。
宿・盆栽・滝をキーワードに触れ合いの場を創出
「建築現場に何度も足を運びましたが、毎回、新鮮な驚きがいっぱい。わくわくしながら楽しみました」とHさん。
今回、家づくりを依頼した(株)NDアーキテクトンの代表・大城貢さんとは、子どもの少年野球の父母会から付き合いが続く旧知の仲。「緑と滝に癒やされながら旅人をもてなしたいと伝えたら、設計担当の比嘉実美さんにも丁寧に対応していただき、想像をはるかに超える素敵な住まいができて、感謝の言葉しかありません」と興奮気味に語ります。
奥さまの実家が営んでいるゲストハウスで、旅人との交流の楽しさを知り、「自宅を建て替えるときは宿を兼ねたい」という計画を温めていました。それが実現したのは今年の6月。宿と住まいが同居する3階建ての宿住一体型の建物が完成しました。
当初予定していた海が見渡せる場所は、旅館業の営業許可が申請できない用途地域に指定されていました。その代替え案として浮上したのは、Hさん所有の別の土地でした。
「75坪と狭く宿との兼用住宅は無理と諦めていた土地でしたが、さすがプロです。狭さは全く感じず、9台止められる駐車場スペースも確保できて大満足です」。
依頼にあたって伝えたのは、趣味の盆栽が楽しめること、滝に癒やされること、風通しがよく、明るいこと、など大まかな希望のみ。「素人のセンスよりプロに任せた方がうまくいく」と思ったからだそうです。
要望のほとんどが凝縮されているのは、駐車場とピロティを兼ねた1階部分です。盆栽がウエルカムツリーのように並ぶエントランス。その横には念願の滝が施され、コンクリートの壁に反響する水の音が心地よく響き渡っています。奥のBBQテラスには、水道・ガス・トイレなどの設備が整い、旅人との交流を心待ちにしているHさんご夫妻の期待に応えています。
日々の暮らしに余裕をもたらす高効率の家事動線
2階の住居部分は、ご主人の強い要望で実現した明るい玄関がやさしく迎え入れてくれます。屋上から招き入れた光が照らす玄関をはじめ、バスルームやトイレには坪庭が施され、ほっと安らぐ時間を演出しています。
室内は凹凸の輪郭に合わせてリビング、ダイニング、キッチンが連動するようにレイアウトされています。洋間とフラットにつながる和室は、完成見学会でも注目を浴びたご夫妻のお気に入りで、「仏壇もインテリアのようです」と誇らしげ。リビングの白い壁に映える墨染色の畳がセンスの良さを際立たせています。
「ほとんどお任せだった」というご主人の横で奥さまが、「家事動線だけはお願いしました」とこっそり教えてくれました。キッチンからランドリールーム、ファミリークローゼット、脱衣所、バスルームとつながる動線は、行き止まりがなくグルグルと回遊が可能。そのまま3つの寝室へも足が伸ばせます。
「洗濯物はお風呂のついでに各自が洗濯機に放り込んで、洗濯後はそのまま家事室でたたんでファミリークローゼットに収納できるので、各部屋から着替えを準備する手間がかかりません」とご満悦の奥さま。家族が協力しやすい回遊性も見逃せないポイントです。
仕事をしながらの宿の経営は大変ですが、プライベート時間に余裕をもたらす機能性が盛り込まれているため、非日常と日常の切り替えがスムーズです。
「この建物は神様からのプレゼントです。これだけ素晴らしい家を手に入れたのだから、思いっきり楽しまなければ罰が当たります」と笑うHさんご夫妻。お二人の目線の先には、笑顔が交差する触れ合いシーンが見えているようです。