あなたの夢を暮らしを応援する
住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

家族の笑顔がこだまする彩り豊かな職住一体の家

家族の笑顔がこだまする彩り豊かな職住一体の家

DATA
設  計: 株式会社建築工房ibox
     (担当/代表取締役 比嘉功)
敷地面積: 247.94㎡(約75.00坪)
建築面積: 94.68㎡(約28.64坪)
延床面積: 116.09㎡(約35.11坪)
用途地域: 一種低層住居専用地域
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2021年9月
建  築: 有限会社名嘉工務店
      (担当/比嘉伸次)
電気・水道: 創電水プラン
     (担当/岸本 貞治)
キッチン: 山浩商事

新しい住宅街にある細長い敷地に、職住一体の2階建ての家を新築したKさんご夫妻。西側の道路面にご主人が営む理容店があり、その奥に開放的な住居スペースをレイアウト。中央にある玄関を基点に職住の程よい距離感が保たれた、ハワイアンな雰囲気の住まいです。

※週刊かふう2022年2月18日号に掲載された内容です。

家族の笑顔がこだまする彩り豊かな職住一体の家

依頼先選びは専門性に加えて人柄を重視

 家づくりのコンセプトは、「ここで過ごす誰もが明るく笑顔になれるように」。舞台の主役がKさん一家4人であることはもちろんですが、訪れた人たちにもぜひ幸せなムードはおすそ分けしたい。ご主人が営む理容店を併設するため、散髪後の爽快感との相乗効果で気分が上がれば、利用者にとっても言うことはありません。
「内外装のイメージはハワイアンテイスト。店舗の漆喰に合わせて住居のクロスを選んだり、好みの色合いに調色した塗料で外壁を塗り分けたり、とことんこだわり抜きました」と奥さま。当初は平屋を想定していましたが、約75坪の敷地に店舗スペースや数々の収納エリアを収めるのは厳しかったため、2階建てに変更。寝室と子ども室を2階に移したことでLDK回りに吹き抜けが誕生し、東の壁一面にはFIX窓がはめ込まれ、文字通りの絶対的な明るさが確保されました。

 理容店一体のマイホームを持つことは、結婚来の夢でした。子どもたちが成長するにつれてその思いは増し、「住居と店舗を別々の場所に借りているのは時間的にも不経済だし、一分でも1時間でも長く、子どもたちの顔が見られる環境がほしかったので」とご主人。そして見つけたのが現在の土地。周囲のまちの雰囲気も、東面に視界が開けた開放的なロケーションも一目で気に入ったものの、サイズや形状、地区計画などさまざまな面で制約があり、理想をかなえるには微妙な条件。見学会や建築会社を回って相談を続けました。
 依頼した建築士にお願いする決め手になったのは、「豊富な専門知識と人柄ですね。どんな素人的なアイデアでも一度しっかりと受け入れてくれて、プロの意見を加味した的確な答えを返してくれる。会うたび話が弾むから、打ち合わせが楽しくて」。建築士と団らんを重ねた濃密な時間は、かけがえのない思い出になりました。

家族の笑顔がこだまする彩り豊かな職住一体の家

空間構成と床の段差で職住間に程よい距離感

 Kさん宅が建つ敷地は、東西に細長いきれいな長方形。南側ほぼ中央にある玄関を挟んで西側道路面に店舗と駐車場があり、見晴らしの良い東側に住居が置かれています。生活のメインスペースである1階は、対面キッチンとLDが連続したワンルーム的な空間で、東端にこぢんまりとした畳間を併設。南側の壁面全体を彩るシャビーシックな柄のクロスと吹き抜けに架かる化粧梁が、リゾート感を演出しています。

 計画時は建築士と一緒に「空間の無駄をいかにそぎ落とすか」に腐心しましたが、完成してみれば広さも明るさも申し分なし。奥さまが「どうしてもほしかった」というパントリー、ウオークインクローゼット、シューズクロークの収納3点セットもコンパクトに収まり、生活の質を高めています。また職住間の接続方法について、「玄関前の廊下を店舗まで延ばすべきか」を最後まで迷った結果、途中にシューズクロークをかませたことで大正解。敷地の高低差から生じたわずかな床の段差と相まって、それぞれのスペース間には絶妙な距離感が生まれ、仕事中もお互いの存在が気になることはありません。

 新居に住み始めてから約半年。家づくりの一切を主導した奥さまが、「イメージ通りの仕上がりと住み心地。家事動線の使い勝手の良さには感心しきりです」と安堵の表情を見せる傍らで、「妻にすべて任せればうまくいくと確信していたので。入居後しばらくの間は、この部分がこんなふうになっていたのか! と新鮮な驚きの連続でした」とほほ笑むご主人。写真を見る限り、新築直後のようにLDKがすっきりしているのは、新居に合う家具を厳選している最中だから。「普段はアパート時代から使っている古い木の食卓を置いているんですが、今日は撮影があるので寝室に押し込んだんです」。そんな裏話を知ればきっと、読者の皆さまもKさんの人柄が読み取れるはず。ソファやテーブルなどがそろい、生活を重ねていけば、明るく笑顔が絶えないKさんらしいテイストが色濃く現れてくるでしょう。

写真ギャラリー

設計・施工会社

名護市東江4-10-7 比嘉アパート1F

家族の笑顔がこだまする彩り豊かな職住一体の家

上下方向の空間操作で不利な敷地条件を克服
家づくりは設計者・施主プラス施工者の共同作業

株式会社建築工房 ibox 一級建築士:比嘉功さん

 どんな建築にも制約は付きものです。今回のKさん宅でまず克服すべき課題となったのは広さと段差。敷地の総面積は75坪ですが、地区計画により敷地境界線から1.5m以上のセットバックが義務づけられており、そこに無理なく住宅と店舗を収める必要がありました。また敷地内にはもともと最大1.3mの高低差があり、住宅のみの設計であれば盛り土をして地盤面を上げる手法も考えられますが、Kさん宅の顔になるのは店舗部分ですから、前面道路・駐車場からのアクセスのしやすさは必須条件です。予算面の制約も当然付いて回り、相談を受けた時点で地盤が軟弱であることが分かっていたため、最初から杭打ち費用を含めたコスト管理が求められました。

 敷地形状は縦横比1対2以上と東西にかなり細長く、平面構成はおのずと現在の形に決定。住居部分は強い要望のあった収納や部屋数、夫婦と子ども2人という家族構成などを考慮して、2階建てのプランを提案しました。限られた面積の中でものびのびと暮らせるように、LDKと和室はオープンな大空間にして、リビング回りは吹き抜けに。都市計画上、東側の敷地周辺には高層建築物が当面建たないことから、リビング・和室・吹き抜けの壁一面には大きく開口を確保して、眺望と光を積極的に取り込みました。一方では階段下のスペースを使ってトイレや外部倉庫を設けるなど、用途ごとにメリハリを付けながら空間の無駄をそぎ落としています。

 店舗部分は道路面のレベルにできるだけ近い位置に設定し、ハンディのある方や高齢者が負担なく出入りできるよう配慮しました。建物全体でみれば、店舗から玄関土間、玄関ホール、そしてLDKへと向かうにつれ少しずつ段差を上げており、敷地の傾斜に沿うような断面構成になっています。Kさんから要望のあった「店舗単独で10坪の広さ」はかなえられず、最終的に8坪の広さになりましたが、床レベルを下げた分だけ天井高を確保でき、顧客からは「以前の店舗の約半分のサイズなのに、今まで以上に広く感じられる」との声が多く届いているそうです。

 引き渡し後、Kさんからは「携わってくれた“チーム”がとても良かった」との感想をいただきました。当然ですが、理想を詰め込んだプランを描いただけでは理想の家は実現しません。家づくりは設計・施工・施主の共同作業であり、現場の職人の力があってこそ。特に今回は現場サイドから密に意思疎通を図り、イメージとの相違がなかったことも満足度向上につながった大きな要因だと感じています。

このカテゴリの記事