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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

機能美と遊び心が融合した木の住まい

機能美と遊び心が融合した木の住まい

DATA
設  計: 株式会社琉球住樂一級建築士事務所(担当/伊良皆盛栄、嶺井典子)
敷地面積: 693.02㎡(約209.63坪)
建築面積: 100.69㎡(約30.45坪)
延床面積: 109.31㎡(約33.07坪)
用途地域: 無指定
構  造: 木造2階建て
完成時期: 2021年6月
建  築: 株式会社琉球住樂
      (担当/伊良皆盛栄)
電  気: 有限会社山城商工
     (担当/照屋盛文)
水  道: 有限会社海西工業
     (担当/西平重則)
キッチン: TOTO株式会社
内部建具: 有限会社照屋木工所
外部建具: 株式会社エクセルシャノン
外  構: 金勢造園
屋  根: スカイルーフ
左  官: 有限会社仲松左官工業
内部大工: 真内装
      (棟梁/伊佐真司)
外部大工: 金城工業
      (棟梁/金城清正)

結婚来、身を寄せ合い過ごしたワンルームから、200坪超の敷地に建つ木の邸宅へ。 昨年6月、長年構想を温めてきた待望のわが家が完成し、新生活を始めたIさんご夫妻。無垢の木と漆喰でできた健やかな空間で、共通の趣味である映画鑑賞を楽しんだり、2人で杯を重ねたり、充実した毎日を送っています。

※週刊かふう2022年1月21日号に掲載された内容です。

機能美と遊び心が融合した木の住まい

見学会で得たアイデアを積極的に取り入れる

 家族構成は夫婦2人に愛猫&愛犬。2階を含めて約33坪ある住空間は、何をするにも動きやすくて広すぎず、ストレスフリーでほどよいサイズ。玄関を上がって上下左右を見渡せば、すべての居室が間仕切りなく緩やかにつながり、横長の敷地形状に寄り添うように直線状に並んでいます。
「今でも家中、木の香りが爽やか。リビング回りは吹き抜けになっているので開放感があり、数字以上に広々と感じられますね」とご夫妻。当初は「平屋で十分」とも考えましたが、「長年ずっと手狭なアパートの一室で暮らしてきたから、時々こもれる場所があったほうがいいよね、ということで(笑)」2階建てに。空間の余白は気持ちの面でも実生活の面でも余裕を生み、結果的に大正解でした。

 家づくりの計画自体は結婚後すぐにスタートしました。さほどこだわりのないまま展示会を巡っていた際に依頼した建築会社と出会い、その姿勢や理念に共感。木の持ち味を最大限に引き出した機能性、デザイン性などが気に入り、「私たちが求めていた理想の家をやっと見つけたぞ! という思いでした」。健康を意識していたお二人にとって、無垢材や漆喰といった自然素材をベースにしていることも大きなポイントになりました。

 周囲に畑地が広がる自然豊かな現在の敷地は、「将来のマイホーム用に」とご主人の実家が用意してくれていた場所。通勤面を考え市街地の土地も検討しましたが、建築士から「Iさんがやりたいことをかなえるには最適」と助言を受け決断しました。相談期間が長かった分だけお互いの意思疎通も深まり、設計案はファーストプランで一発OK。細かな造作や装飾は見学会で訪れた家々をお手本にして、太陽の光を照明に利用したスカイライトチューブ、家事が楽々こなせる通路兼用のオープンクローゼット、オリジナルのホームシアター等々、さまざまなアイデアを取り入れました。

機能美と遊び心が融合した木の住まい

やりたいことをちりばめた無垢材と漆喰の快適空間

 焼杉板の黒い外壁がトレードマークの外観デザインに、機能美あふれる室内空間。家に入ればまず柱や梁の存在感に圧倒されますが、お二人が自宅の特徴を「ゆっくりと遊べる家」と評しているように、Iさんならではの遊び心も随所に垣間見えます。例えば先ほど挙げたホームシアターは、造り付けのオリジナル仕様。スクリーンのサイズに基づきプロジェクターまでの適切な距離を算出し、リビング頭上の梁を利用してそれぞれの設置スペースを造作しました。
 映画に負けず劣らず大好きなお酒は、ダイニング回りの一角で。新築に合わせて購入したペンダント照明の下、木の棚に並べたグラスの中からお気に入りを選び、2人向き合い杯を重ねる時間はこの上ない至福。すぐ脇にぽっかり開いた窓際スポットには、「建築士さんが提案してくれた」という円形の木製テーブルが置かれ、気分に合わせて飲む場所を使い分けられます。

 昨年7月の入居後は敷地の余白にも目を向けて、ほほ手付かずの状態だった南面の庭は、鮮やかな緑の芝生に生まれ変わりました。さらに西面の空きスペースを利用して、ご主人が家庭菜園をスタート。一気に充実度を増した外構と歩調をそろえるように、最近は夫婦で選んだ観葉植物が室内外あちこちにお目見えし、木の家特有の温かみある雰囲気が一段と高まりました。

 快適な温湿度が保たれた過ごしやすさ、家事がスムーズにこなせる使いやすさは言わずもがな。優れた断熱仕様による省エネ効果にも目を丸くして、「光熱費がこんなに抑えられたのに、毎日がこんなに気持ちいいなんて」と笑うご夫妻。自慢のわが家はこの先もきっと、2人が新しい遊びを見つけたり、年齢とともに生活スタイルが変わったりしても、あらゆる変化を丸ごと受け入れて、ますます味わいを増していくことでしょう。

写真ギャラリー

設計・施工会社

南城市玉城字愛地697-1

機能美と遊び心が融合した木の住まい

緻密さと曖昧さのバランスが、居心地のよさを増幅する

百年以上前からある素材で百年以上先まで住み継がれる家を省エネで快適。
最先端の環境技術を沖縄の家づくりで実用化する

株式会社琉球住樂 一級建築士:伊良皆盛栄さん

 家づくりは毎年毎回バージョンアップの連続です。創業来、私たち琉球住樂が掲げてきたのは「三世代住み継がれる沖縄型省エネ木造住宅」。百年先まで容易にメンテナンスできる快適な家をつくるには、百年以上に及ぶ歴史の淘汰を経た素材・形態が最適と考え、飫肥杉、漆喰などを標準で採用し、伝統的な沖縄民家のエッセンスを踏襲。その上で健康・環境・省エネといったテーマを追求し、蒸暑地の沖縄では本土並みの省エネ基準を適用するのは困難と言われるなか、研究を重ねて独自の評価方法を考案しました。最新の環境・エネルギー技術も積極的に導入し、今ではZEHなどの厳しい基準を満たした設計も無理なく実現できるようになっています。
 しかし一方では、逆説的に聞こえるかもしれませんが、個々の住宅のプランニングでは厳格な基準を求めすぎず、多分に曖昧さがあっていいと考えています。例えば目標にすべき省エネレベルはあれど、同じ温湿度でも人によって快不快の感覚は異なるので、ある程度の幅を持たせていい。レイアウト面でも、沖縄の気候風土に根ざした風水のベースを押さえたら、ライフスタイルの変化を許容できるように造り込みすぎないくらいでちょうどいい。今回のIさん宅も、トータルで見れば琉球住樂2021年バージョンの家ですが、最先端の知見というよりは当社で実績のある技術・手法をバランスよく投入し、空間的にも10年先、20年先を見据えた余白を多く残しています。

 Iさん宅の設計で最初に心がけたのは、敷地の広さに引っ張られることなく2人暮らしに最適なサイズを見極めて、冗長すぎず落ち着きのある空間を創出すること。大人2人がくつろげるようなスポットをちりばめながら家の大枠をつくり、細部の造作や意匠については当社の若い設計スタッフを交えて詰めていきました。壁に組み込んだホームシアターはIさん宅の特徴を表す分かりやすい例ですが、他にも棚の造形や照明の使い方などに個性がよく表れていますね。

 私たちの次なる目標は、こんな具合にデザインの幅を広げて、新バージョンの木造住宅を創造することです。3年前に全国的な「木の建築賞」を受賞した際、本土で選ばれた他の受賞作に触発され、木の架構の美しさを追求したり、もっと遊び心を持たせたり、貪欲にチャレンジしていきたいと考えるようになりました。また省エネ面では、ZEH以上に環境負荷の低いLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅を視野に、沖縄の気候風土に即した設計手法を研究しています。

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