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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

ハレの2階、ケの1階。2つの顔を持つ美モダンな家

ハレの2階、ケの1階。2つの顔を持つ美モダンな家

DATA
設  計: 株式会社 NDアーキテクトン
     (担当/大城貢、内間塁)
敷地面積: 227.98㎡(約68.9坪)
建築面積: 101.43㎡(約30.6坪)
延床面積: 159.27㎡(約48.1坪)
用途地域: 第一種中高層住居専用地域
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造2階建て
完成時期: 2022年4月
構造設計: Life tect一級建築士事務所
     (担当/宮里尚志)
建  築: 株式会社国興建設
     (担当/儀間淳二)
電  気: 有限会社開成
     (担当/比嘉一貴)
水  道: 有限会社春水工業
     (担当/中村裕次)
キッチン:  クリナップ株式会社
     (担当/新里直央)
カーテン: 株式会社モン・シュマン
     (担当/大城厚子)

住宅街に建つKさん宅は2階LDKの家。
パブリックとプライベートの鮮やかな分離、移ろいへの演出、多彩な素材使いで感性に響く住みよさを高めています。

 

週刊かふう2023年6月2日号に掲載された内容です。

ハレの2階、ケの1階。2つの顔を持つ美モダンな家

開放の気持ちよさと家の中の眺めと家の中の眺めと

 周囲を家々に囲まれた住宅街。建物内に施された半屋外の階段を上った先にエントランスがある、コンクリート造の2階建て住宅。この階段はいわば第二のアプローチで、洒落たスケルトン。舞い込む光と風も、ステップを軽やかに演出します。 

 ポーチにたどり着くと視界は一気に開けて大きなテラスへ。その雰囲気は、まるで光庭のある平屋! リビングのガラス戸を開けるとコンクリート打ちっぱなしの開放空間が広がり、正面には琉球石灰岩のアクセントウォール。足元には深い色合いの無垢材が敷き詰められ、コンクリート、石、木のコントラストが一つの風景となって立ち上がります。さらに目を引くのは、杉板コンクリートの腰壁をまとったアイランドキッチン。オブジェのような存在感を放ち、目を楽しませる装置にもなっています。

 一方、ダイニングはリビングと緩やかに分離され、心地よい“囲まれ感”を創出。家族で囲む丸テーブルが置かれ、壁際にはデスクカンターも設置。「食事はもちろん、団らんや勉強をみたりと活用頻度が高いんですよ」と奥さま。メリハリのある空間づくりがKさん宅の神髄です。

ハレの2階、ケの1階。2つの顔を持つ美モダンな家

「時」を早め、深めるプライベート空間

 浴室などのサニタリー空間とランドリールーム、ファミリークローゼットは、キッチンの背後にレイアウトされ、エントランスのシューズクロークからもアクセスできる、家事にも便利な回遊設計。水回りは1階とつながる階段にも接続、機能的な住みよさもかなえています。階段は壁に囲まれたボックス型ですが、Kさん宅ではここも見どころの1つに昇華。「場」の変容を予感させるゲートのような入り口、天窓から差し込む光が生み出す陰影、洗練された照明演出。1つの立派な空間として存在しています。

 地下に降りるような感覚で1階につくと、LDKとは全く異なる印象! 主寝室、子ども室、和室をメインとしたプライベートエリアにふさわしい、密度感と静寂さが心地よく、光の抑揚も絶妙です。その気配を最高潮に高める、廊下の演出もまた秀逸。階段手すりから天井へと木のルーバーがわたり、守られるような安堵(あんど)感と奥へと進む高揚感を生み出しています。突き当たりには約3畳の和室、引き戸を開けると廊下にも陽光が流れます。

 リビングが表舞台のハレの間なら、1階は日常の休息を大事にしたケの場所。シナリオ性のある家を完成させたご夫婦の感性の豊かさが伝わってきます。

ハレの2階、ケの1階。2つの顔を持つ美モダンな家

出会いの結晶を未来につなぐ

「いつかは自分たちの家を」そう思い続け、タイミングを得たと同時に土地探しからスタート。設計会社の決めては「コンクリート打ち放しの家を前提に数社の作品集を見て『ここしかない』とオフィスに出向き、実際の設計を体感したことと、所長に出会ったこと」と話します。「初対面にもかかわらず、僕らの家づくりのコンセプト──土地に傾斜があるので、プライバシーを守るためにも2階リビングの家にすること。2つの家から成っているような造り。この2点に『面白い!』と興味を示され、その場でデッサンを起こしたんです」。

 家づくりの最中のやりとりも刺激的で楽しかったとご夫婦で振り返り、ご主人いわく「完成した時は、ちょっとしたさびしさを感じたほど」。暮らし始めて約1年、今の思いは「申し分ないです。細部にまでこだわった仕上がりの美しさに改めて感激しています」。奥さまも「家事のしやすさをはじめ、あげればキリがないくらい満足です」とにっこり。住まいの光景については「僕は、ソファに腰掛けて見る石の壁やキッチンが特に好きで、表情の豊かさを感じます」「私はキッチンのガラス越しに見る階段照明のきらめきが大好き。料理するのも楽しいです」と、それぞれのビューポイントを交えて話してくれました。

 テラスでの遊ぶお子さんたちを見守りながら、「将来、子どもたちがこの家を継ぐ頃には、素材の趣も深まり、また一味違った魅力になると思うんです。何より、頑丈なコンクリート住宅ですから……100年は持ちますよ!」と頼もしい笑顔のご主人。住まいの物語はいつまでも、いつまもで続きます。

写真ギャラリー

ハレの2階、ケの1階。2つの顔を持つ美モダンな家

難ありの土地からポテンシャルを見出し、最大限に生かす。
表情豊かな空間づくりは、予算配分のメリハリもポイント

NDアーキテクトン 福祉住環境コーディネーター:内間塁さん

 施主のKさんとの出会いは私にとっても印象的でした。土地は住宅街にあり傾斜もある。1階にLDKを置くと丸見えになってしまうので2階リビングにしたいと、土地や周辺環境をよく理解されたコンセプトをお持ちでした。また、平屋の上に平屋を載せたような家にしたいという、ユニークな発想。創り手としてのマインドをかき立てられました。

 2階リビングのメリットは、天井高を確保しやすく開口も広く取れるため、プライバシーを守りつつ開けた空間づくりが行えること。課題は玄関の位置で、1階に置くと家族間のコミュニケーションが取りづらくなり、2階だと上り下りが増える不便さが生じる。Kさんは家族のつながりを優先され、結果、1階が地下に感じる展開の面白さと独創性も生まれました。 

 土地は高低差のある旗竿(はたざお)地で一部を造成。制限も少なくないプロジェクトでしたが、幸いなことに水回りに適した北西側には高い建物や接近する住宅があり、かたや南側と東側は大きな開口が取れる環境でしたので、ポテンシャルを最大に生かせるようプランしました。プロポーションの特徴としては、高さのある2階とのバランスをはかり、1階の建物自体を低くめにしたこと。これにより意匠性の向上とコストダウンの両者をかなえています。
 
 今回のケースは予算配分のメリハリも大きなポイントで、同じコンクリート打ち放しの壁でも、エントランスやLDKの壁面は塗装仕上げに、プライベートエリアは風合いそのままにと、施工にかかる費用もコントロール。また、LDKは使用する素材の品質にもこだわり、プライベートエリアでは役割重視のアイテムを採用。結果的には、相違によって住まいの味わいが深まるという、二重のメリットにつながっています。

 設計やデザインにはKさんの感性が大きく反映されており、キッチンに視線のヌケを作るガラスのはめ込みもその一例で、「そこから階段が見えるようにしては?」というアイデアを添えての提案でした。こんな空間にしたいという洗練された感覚的なものを受けてプロとしてプランし、それをセレクトして行くという、セッション的な進行と展開。「家づくり自体が楽しかった」と話すKさん以上に、私たちも改めて住まいづくりの喜びを享受しました。完成度の高さにも感激されたとのことですが、私たちがこだわる「仕立ての美しさ」を実現する職人技術もまた、当社の家づくりの強みとなっています。
 

設計・施工会社

読谷村字渡慶次1184-1

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