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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

上空から降り注ぐ光が空間と暮らしを爽快に彩る3階リビングの家

上空から降り注ぐ光が空間と暮らしを爽快に彩る3階リビングの家

DATA
設  計: 有限会社真玉橋設計事務所
     (担当/野里雅樹、比嘉美幸)
敷地面積: 177.80㎡(約53.78坪)
建築面積: 129.04㎡(約39.03坪)
延床面積: 199.60㎡(約60.38坪)
用途地域: 近隣商業地域
構  造: 鉄筋コンクリート造
完成時期: 2023年8月
施  工: 株式会社エムズ
     (担当/宮城)
電  気: 一光エンジニア
     (担当/具志堅)
水  道: 有限会社エコ電水
     (担当/伊波)
キッチン: 株式会社CUCINA沖縄
     (担当/近藤)

限られた空間を縦方向に引き延ばし、視線と心を全方位に解放。
外に開きにくい環境下に建つNさん宅は、最上階の3階にリビングを置いたデザイン性の高い住まいです。

週刊かふう2024年3月1日号に掲載された内容です。

上空から降り注ぐ光が空間と暮らしを爽快に彩る3階リビングの家

厳しい西日環境と正面から向き合い、打開策を練る

 西海岸の開けた景色を求めて、リビングを最上階の3階へ。Nさん一家が多くの時間を過ごすメインフロアは、周囲の町並みからポンと頭一つ突き出た位置にあり、眼下に読谷半島の大パノラマが広がります。海まで展望できるのはもちろんのこと、それ以上に視界の大部分を空が占めており、上空に浮かぶ雲や天体が間近に感じられます。

「すべてがイメージ以上でしたね。朝はテラスで朝日を浴びながら身支度を調えたり、夜は晩酌のさかなに月見をしたり、一日を通して快適に過ごせています」とご主人。リビングはダイニング・キッチンと一体となったワンルーム的な空間で、屋外テラスともオープンにつながっています。また3階の西側一面は大胆なガラス張りになっており、開放感を一段と高めています。

 Nさんの新居は1階を駐車場にした建坪約39坪のRC造住宅です。敷地には元々奥さまの実家があり、経年とともに傷みが激しくなってきたため5年ほど前から建て替えを計画。「急がず理想の環境を」と仕事と子育ての合間を縫ってじっくりと構想を練り、昨年8月に待望の新生活をスタートしました。
「階数をどうするかで散々悩みました。3階建てにすれば見晴らしが良くなることは分かっていましたが、逆に遮るものが何もないので西日をダイレクトに受けてしまいます。とはいえ以前と同じ2階建てでは、隣家や前面道路との関係で光と風の取り入れ方が難しい。最終的にはある程度の西日の影響は覚悟の上で、眺望を優先しました」と奥さまは振り返ります。
 現在、3階リビング西面には壁掛けテレビ用の造作ボードが設置されており、強烈な日差しを一部軽減。暑さの気になる時間帯はブラインドで日射を調整しています。

上空から降り注ぐ光が空間と暮らしを爽快に彩る3階リビングの家

コートに植栽を並べ毎日の暮らしに潤いを

 2、3階の各フロアは生活シーンに応じて性格分けされています。団らんと憩いの場である3階に対し、2階は主寝室と子ども室を中心に、書斎、ファミリークローゼットなどを配したプライベートフロアになっています。
 隣家が目の前に迫り、眺望が期待できない条件の下、実家時代の経験をもとに「この向きなら残波岬まで視線が抜ける」という位置に主寝室の開口を計画。子ども室は採光面で若干の懸念がありましたが、坪庭に落ちる光が予想以上に効いて十分な明るさを保ち、勉強も遊びも思い切り楽しめる快適な居場所になっています。
「家ができてから、頻繁に学校の友だちを連れてくるようになりました。子ども室だけにとどまらず、階段を行ったり来たり、家全体が遊び場状態です」。
 その階段回りは吹き抜けになっており、子ども室同様に、南側外壁の内側に設けた植栽スペースからやわらかな光が差し込んできます。

 デザインは内外装くまなく、ホテルライクな雰囲気に仕上げました。白を基調にした3階LDKはひときわ明るさが映え、2階個室や階段には部分的に打ち放しのコンクリートを取り入れるなど、場所によって少しずつ趣を変えています。キッチン、リビングからそれぞれ回り込んだ位置にあるサニタリーも機能的で高級感が漂い、家事や身支度の間に自然と心が整っていくようです。
「バスルームをサービスコートに面して配置したことで、窓を大きく取れたことも良かったですね。今後は窓の外の植栽を増やし、今以上に緑あふれる空間にしていく予定です」。
 緑を愛(め)で、空を仰ぎながらのバスタイムは至福のひととき。開放的なLDKとは別の角度から、毎日の暮らしに潤いを届けてくれます。

写真ギャラリー

上空から降り注ぐ光が空間と暮らしを爽快に彩る3階リビングの家

大胆なプランニングと繊細な納まり場所ごとに効果的に採光して居住性を高める

室内外の視線の広がりを追求したオープンなフロア計画
デザイン性と機能性を兼備した造作家具・造作収納


建築士:野里雅樹さん(中央)、比嘉美幸さん(右)、島袋修さん(左)

 プランの最優先事項の一つは眺望です。建て替え前の実家と同じ2階建てではなく、3階建てを選んだのは、日射や暑さ、建築コストの上昇といった厳しい条件を承知の上で、それらを上回る絶景を期待してのこと。したがって考え方の順序としては、最初から眺望と西日対策のバランスを図るのではなく、3階建てならではの開放感を最大限に生かし切った上で、外部環境の影響をコントロールするという方向でプランニングを進めました。

 3階は視界の開けた西側全体を眺望スペースと捉え、LDKと屋外テラスを一体的に計画。リビング中央に造作した壁掛けテレビ用のボード以外はガラス張りで仕上げ、よりオープンな雰囲気が感じられるように、リビングの出隅に桟のないコーナーガラスを設置したり、掃き出し窓の欄間までガラス張りにしたり、大胆で細やかな工夫を重ねました。一方で3階西側以外は外へ開くのが困難なため、外壁で覆ったコート(光庭)を要所に配置して、上空から採光を得る手法を採用しました。LDKと反対の位置にあるサービスコートは、バスルームをはじめ洗面入り口やパントリーに光を届け、吹き抜けになった階段脇に設けた植栽スペースは、階段回りや2階子ども室の明るさを補っています。

 動線面では、家事を効率よく行えるように、キッチン脇に洗面家事室とバスルーム、サービスコートを配置。リビング入り口や階段側からも出入りできるので、行き止まりがなくどこからでもスムーズに使用できます。また階段の昇降に一苦労するだろう遠い将来に備え、エレベーターを後付けできるスペースとして、1階から3階の同じ位置に納戸を設けています。

 デザインは視線の広がりが映えるようにシンプルにまとめました。それぞれの場所の雰囲気に合わせて収納や棚、建具も造作し、無駄のないスマートな空間を創出。例えばLDKでは、リビング側は着席が多く、キッチン側では立ち作業するという行動パターンを踏まえ、床に段差を付けてシンク一体型のダイニングテーブルを造り付けるなど、機能面にも配慮しています。

設計・施工会社

沖縄市美里6-4-16

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