リノベでにぎわいを再生。彩り豊かな2世帯住宅
- DATA
- 所在地:宜野湾市
- 家族構成:夫婦、子ども1人、祖母
- 設計:玉城勝也+Atelier情熱集団(担当/祖堅将一)
- 敷地面積:235.97㎡(約71.38坪)
- 建築面積:93.64㎡(約28.32坪)
- 延床面積: 152.94㎡(約46.26坪)
- 構造:鉄筋コンクリート造2階建て
- 用途地域:第一種住居地域
- 完成時期: 2019年2月
- 建築:Creative Team 情熱集団(担当/祖堅将一)
- 電気 :システム電健建(担当/玉那覇治)
- 設備 :有限会社スイケン(担当/中村清貞)
- 建具 :三和木工所(担当/仲田光)
- 塗装:ちゅらら工房(担当/具志直人)
かつて3世代7人が一つ屋根の下で暮らし、毎日笑顔でにぎわっていた築約30年の実家を、同居型の2世帯住宅へリノベーション。
状態が良好なものは再利用しつつ、お気に入りのクロスやタイルを選んで彩り豊かな空間に造り替え、家族の新たな歴史をスタートさせました。
既存の内階段をそのまま生かし、2階を子世帯専用フロアに
今回のリノベーションの舞台は、奥さまが生まれ育った実家。2階建てで延床面積約46坪のオーソドックスなRC造住宅で、以前は1階にLDKと2つの和室があり、2階には個室が3室並んでいました。子ども時分、最も多い時期には両親や祖父母ら7人が一緒に暮らしていましたが、時は流れて気付けば母親一人のみ。朝昼晩と食卓がにぎわい、至る所で渋滞を起こしていた毎日が嘘のように、静かな時間が流れていました。
結婚後に家を出てアパート生活をしていたNさんご夫妻は、「広い家に一人暮らしはやっぱり心配。私たちも子どもが生まれ、同じ家に住んだほうがお互いに何かと助かるだろうから」と昨年初めに改修計画に着手。ご主人が仕事を通して付き合いがあり、「建築のことなら何でも相談できる」と信頼を置いていた建築士事務所に早速依頼しました。
「当初はまったくノープランの状態。以前の家は間仕切りが多く、日中でも全体的に薄暗い感じだったので、とりあえずは明るく風通しがよくなればいいな、という程度に考えていました」とご主人。築約30年という割には躯体に目立った劣化や傷みは見られず、予算・要望に応じた内外装の改修だけで済むことも確認。親子世帯は完全に分離せずに既存の内階段をそのまま生かし、家族全員の共有スペースに充てた1階の一室を母親の個室として利用し、2階を子世帯専用のフロアすることにしました。それがデザイン面の話に移るに従い、「妻のやる気に一気にスイッチが入ったようです」。建築士と丁々発止でやり取りする様子を見守りながら、ご主人は唯一任された建具など造作類の手配を黙々と進めていきました。
3Dパースで内装をシミュレーションし、イメージ通りにコーディネート
Nさんが目指したのは、シンプルでおしゃれなカフェのような家。特にこだわりに目覚めた奥さまは、建築士が用意してくれた3Dパースを参考にイメージを膨らませ、一つ一つの空間ごとに具体的な仕上がり状態を確認しながら、多彩な色柄のクロスやタイルをセレクトしていきました。
「見れば見るほど、考えれば考えるほど新しいアイデアが湧き出てきて。カーテン一つ選ぶにも時間がかかり、入居後しばらくは2階の窓回りに何の目隠しもしないまま暮らしていました」と話すように、すべての内装工事が一段落したのは最近のこと。手元には奥さまが取り寄せた建材のサンプルが山のように残り、「建材屋を開けるんじゃないか」とご主人も苦笑い。それでも「建築士さんからその都度適切なアドバイスをもらえたおかげで、多種多様な材料を使っているにもかかわらず全体に統一感があり、想像以上の仕上がりになりました」。
内装は全面的に改修したわけではなく、良好な状態のものは再利用しています。室内を見てまわると、深い艶に年季を感じる腰板や、古い木の欄間が目に留まり、旧宅の記憶を引き継いだリノベ住宅であることが伺えます。また躯体自体には手を付けず、外装はペンキの塗り直しにとどめました。
間取りは当初のイメージ通りに、主寝室と母親の個室以外の間仕切りはすべて取り払って、1、2階ともにフロア全体がつながったワンルーム的な空間に。存在感を取り戻した各方位の窓から明るい光と風が差し込み、家中を巡る爽やかな空気の流れに乗って、かつてのように3世代の声が行き交います。親子ともども、住まいと家族の新たな歩みを実感する毎日です。