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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

浮遊する屋根の下 間取りが「八変化」する家

浮遊する屋根の下 間取りが「八変化」する家

DATA
所在地:浦添市
家族構成:夫婦、子ども2人
設計:松島デザイン事務所(担当/松島良貴、平良真美)
敷地面積:233.87㎡(約70.9坪)
建築面積:107.99㎡(約32.7坪)
延床面積:107.99㎡(約32.7坪)
用途地域:第一種低層住居専用地域
構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
完成時期:2010年9月
電気:松島電気工事(担当:松島良成)
水道:泉水設備株式会社(担当:山入端忠)
キッチン:有限会社モブ(担当:照屋涼子)

豊かな緑が残る敷地に建つ、コンクリート打ち放しの平屋住宅です。立面的には屋根の構造によって風と熱の流れをコントロールし、平面的には間取りをフレキシブルに変更できるという大きな特徴を備えています。住み始めてから10年たった現在も、そんな設計意図の通りの快適な暮らしが続いています。

浮遊する屋根の下 間取りが「八変化」する家

正方形の躯体を3×3で9等分

 屋根が躯体上部に持ち上げられて宙に浮いたような、外観デザインが特徴的。夜、真横から眺めると、緩やかに傾斜のついたシャープな屋根とコンクリートの外壁の間から明かりがこぼれ、幻想的なムードに包まれます。庭に面した南側ファサードは全面ガラス張りで開放感にあふれ、「庭の真下は緑地と畑地。人目を気にせず過ごせるから、カーテンの類いは一切不要です」とご主人。十余年前に家づくりを始めたとき、「この土地ならしばらくは変わらぬ景観が楽しめそうだ」と見込んだ通りに、緑を身近に感じるオープンな暮らしを楽しんでいます。
 屋根と躯体の間にできたスペースは、日常生活を送る上では、家族の気配や各部屋の雰囲気を伝える役割を担っています。仕切りをすべて閉めてもその上部は空いているため、いわば家全体が大きなワンルームのようにつながっています。さらに家の中央にある水回りコートにはトップライトから光が差し込み、天井と仕切り間の隙間を介して隅々まで明るさが行き渡ります。
「家中を走り回ることができて、その時々の用途やライフステージに応じて使い方を変えられるような家にしたいね、と話をしながら設計を進めました」というその間取りは、よくある何LDKなどでは到底説明できないユニークな形状です。平面的にはシンプルな正方形の躯体を、縦3列・横3列に計9等分し、先ほど挙げた水回りを中心に配置。 それを取り囲む8つのスペースは、仕切りを開閉することで部屋のサイズを調整でき、すべて開け放てば「ロの字」に回遊できるワンルームになり、逆に閉めれば最大8つの個室が現れます。

浮遊する屋根の下 間取りが「八変化」する家

多趣味な生活を受け止める空間構成

 依頼した建築家とご主人は、学生時代からお互いをよく知る間柄。「在学中はもちろん卒業してからも、どのような姿勢で建築と向き合ってきたのか分かっていましたからね」と振り返り、就職のため一度は沖縄を離れたものの約10年後に帰沖して家庭を構え、「家を建てるときはお願いすると決めていました」。建築家からの挑戦的とも思える提案にも耳を傾け議論を重ね、今回のプランが実現しました。
 自在に「八変化」する間取りとはいえ、東側の列中央にはキッチンが、南西のコーナーにはテレビが置かれているため、日常的な使用パターンはほぼ固定されています。屋外デッキに面した南側3室は主にリビングダイニングとなり、キッチンの隣の一室にダイニングテーブルを配置。一方でキッチン奥に並んだ北側のスペースは、主寝室と子ども室に充てられています。
 このうち仕切りを開閉する機会が多いのが、玄関回りの西側の列とリビングダイニングです。来客時にキッチンやダイニングテーブルの仕切りを閉じて公私の空間を切り分けたり、北西コーナーの一室を閉じて室内干場にしたり。あるいは多趣味なご主人の要望に応えるように、空手の稽古、三線の練習、古酒の展示等々、多彩な使い方がなされています。
 さらに生活の余白を受け止める空間として、リビングダイニングの床下には3つの収納スペースが用意されています。そのうち一つは古酒蔵になっており、マニア垂涎の希少銘柄がずらり。こんな具合に、月日の経過とともにマイホームライフにどっぷり漬かっている様子ですが、実はこれも親友である建築家の思惑通り。術中にはまった自覚があるのかどうかは、まだ取材し切れていません。

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