自然と人の心地よさが調和する ZEH仕様の「光涼風樹の家」
- DATA
- 設 計: 一級建築士事務所
HARMOdesign 株式会社 - 敷地面積: 166.89㎡(約50.5坪)
- 建築面積: 73.19㎡(約22.1坪)
- 延床面積: 121.08㎡(約36.6坪)
- 用途地域: 市街化調整区域
- 構 造: 木造軸組工法
- 完成時期: 2021年5月
- 施 工: HARMOdesign 株式会社
(担当/岸田) - 電 気: とも電設(担当/佐久田)
- 水 道: 日信工業(担当/杉本)
- キッチン: クリナップ(担当/新里)
自然・人・資源、3つのチカラのバランスを考えながら、沖縄の伝統家屋を現代の視点で再構築したエコハウスです。
週刊かふう2023年3月17日号に掲載された内容です。
カフェスタイルか、沖縄の伝統家屋風か
兵庫から沖縄へ移住して18年。一級建築士の岸田匡史さんは満を持してマイホーム建築に取りかかることにしました。
「しかし、ブルックリンスタイルのようなカフェ風の住まいを考えている妻と、沖縄の伝統家屋を現代のセンスで再構築した住宅をプランしていた私の間で、大きく異なる方向性をすり合わせるところから始めなければなりませんでした」と岸田さんは当時を振り返ります。
来沖した当初はスタイリッシュなコンクリート造の住まいに憧れ、そういう設計をしたこともあったという岸田さん。それが沖縄で暮らすうちに、住まいに求められる温もりややすらぎ、くつろぎを考えると木の質感に包まれる木造住宅の方が適していると思うようになりました。また高温多湿な沖縄の気候からみても、結露やカビ、冷房の利き具合に有利な木造住宅を推奨したいとのこと。
「変なの造ったら建て直し!」と要求する奥さまに対し、「君の予想より断然良い、しっかりした家を造るから、任せて!」と、最終的には岸田さんへ一任する形で決着しました。
まわりの自然と調和する省エネ住宅が誕生
丘陵の斜面に位置する岸田さんのお住まいは、南側に流れる河川の対岸に緑豊かな風景が楽しめ、後背にも里山が広がる、のどかな住宅街にあります。その景色にしっくりと馴染む切り妻屋根。
かつて感動した備瀬の美しい集落を思い描きながら「単なる伝統住宅の踏襲ではなく、昔のウチナー家を現代の解釈で再構成したら」と設計を進め、沖縄らしさを表現しながら遊び心がのぞくユニークな外観へと仕上げました。
住宅性能についても熟考し、屋根や壁を外断熱で覆って高断熱・高気密に仕上げたZEH基準相当の省エネハウス。費用対効果を考えると10年で元が取れるのでは、とのこと。
「太陽光パネルを搭載したオール電化住宅に仕上げ、光熱費のシミュレーションでは1カ月当たり500円程度に抑えられそうです」
リビングに設けた小さな階段は、床暖房用のエアコン機をカバーする役目も果たしています。「リビング下の基礎の中を温風が流れるように、あえてエアコンを床近くに設置しています」との斬新なアイデアに驚きました。
また2階の寝室は室内にエアコンを設置せず、ロフトから快適な温度の空気が2部屋へ流れるエコ仕様。省エネと整ったインテリアの両得をかなえています。
収納・家事・育児を考え、家族で成長する住まい
完成見学会には多くの人々が来場してくれ、好評を得たそうです。子どもたちは楽しそうに、吹き抜けを介して1階と2階でキャッチボールしていたとのこと。
「今では妻も『森のロッジカフェテイストも悪くないわね』と大満足しています」と笑う岸田さん。
玄関からファミリークローゼットを備えた洗面スペースへ抜ける途中にアウターウエアを掛けておける収納スペース、家族と来客の動線を分ける壁にフラワーアレンジメントなどをディスプレーできるニッチ、リビングに面したヌック(こぢんまりとした居心地の良い空間)など、設計士ならではのユニークなアイデアときめ細やかな空間使いを随所に発揮しています。
仕切りを設けないオープンな造りは、2階のアトリエや1階の対面式キッチンから子どもたちの様子を見守ったり、子どもたちが親の働きぶりを見たりと、家族が互いに学ぶ効果ももたらします。
「手伝いなどを通して、自らもできるようになっていくだろうと考えています。このように家族みんなが成長していくことを我が家では『家育(やーいく)』と呼んでいます」
家族みんなが楽しく、健康でやすらかに暮らせる家。「光涼風樹(こうりょうふうじゅ)の家」は、岸田さんが提案する新しい時代のウチナー家です。
写真ギャラリー
自然と調和する暮らしを実現した
現代版ウチナー家「光涼風樹の家」
一級建築士事務所 HARMO design 株式会社
岸田匡史さん(一級建築士・一級施工管理技士)
南に河川、緩やかに上がる段丘、背面には緑深い里山。「敷地の南と西の2方向が道路に面するロケーションは、風水的にも理想的な環境」と説明する一級建築士の岸田匡史さんは、自身のマイホームを建てるにあたって、これまで培ってきた知見と技術、より愛される住宅の条件にこだわり尽くす集大成を目指したといいます。
躯体に赤瓦や杉板張り、琉球石灰岩を練り混ぜた土壁など、琉球古来の建材を選定し、周辺の豊かな自然を上手に取り入れて、「自然・人・資源」のチカラが調和する暮らしを実現したZEH仕様の自然派住宅です。
全体計画としては、採光や通風が南から北、西から東の2方向に流れる状況を考慮して、最も条件の良い南側を最大限に活用することにしたとのこと。
「リビング上部に高さ6・5メートルの吹き抜けを設け、そこに面するように各スペースを配置しました」
そうすることで、1階と2階、各部屋が緩やかにつながる開放感を創造し、豊かなコミュニケーションが生まれることを意図しています。
7寸角(21cm角)の大黒柱を家の中心に据えて、最も条件の良い南にリビングを配置。その大きな吹き抜けに面するように、キッチンやキッズコーナー、2階のアトリエや個室などを配しています。吹き抜けを介して各室や家族がつながり、豊かなコミュニケーションが生まれるよう工夫。北側にはキッチン、ウォークインクローゼットや洗面脱衣所、浴室を設けて、それぞれが回遊動線で移動できます。
「単なる伝統住宅の踏襲ではなく、昔のウチナー家を現代の解釈で再構成した」と語る岸田さんは、沖縄のサバニにも使われた宮崎産の飫肥(おび)杉と沖縄の漆喰を内装に採用。家の半分を真壁収まりとし、間延びしないよう階高と柱・梁のプロポーションに心を配ったそうです。
小屋組の杉・松の断面、ダイナミックな梁がまるで森の中に住んでいるような心地よさ。「家は現代社会の延長にあるのではなく、そこから家族を守ってやすらぎを与えるシェルターのようなものだと考える」という岸田さんのコンセプトハウスが完成しました。
設計・施工会社
一級建築士事務所 HARUMO design(ハルモデザイン) 株式会社
TEL:098-996-4810 | https://okinawamokuzou.com/