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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

銘木を贅沢に使った本格派の和風建築

銘木を贅沢に使った本格派の和風建築

DATA
設  計: イー・フレス
     一級建築士事務所
     (担当/石松完治)
敷地面積: 282.09㎡(約85.33坪)
建築面積: 133.32㎡(約40.33坪)
延床面積: 134.98㎡(約40.83坪)
用途地域: 未指定
構  造: 木造在来軸組工法
完成時期: 2024年1月
施  工: イー・フレス株式会社
     (担当/玉城隼人)
電  気: 株式会社 よしでん(担当/吉井)
水  道: 株式会社 三星建設(担当/瀬長)
キッチン: TOTO株式会社(担当/樫本)

2重の切妻屋根と軒を支える磨き丸太など伝統的な日本家屋の堂々たる佇まいに、端麗(たんれい)な「和」の心づかいが薫り立ちます。

週刊かふう2024年1月26日号に掲載された内容です。

銘木を贅沢に使った本格派の和風建築

叔父が温めていた伝統家屋を実現

 のどかな風景が広がる中に、新しい木造住宅が建ち並ぶ一角。イー・フレス株式会社が手がけた分譲地に、沖縄ではまだ珍しい本格的な日本家屋が完成しました。
 大工職人である施主のIさんはイー・フレス社長の甥にあたり、自らも棟梁として自宅建築に深く携わっています。ちなみに奥さまも同社にお勤めで、夫婦ともにイー・フレスの卓越した住まいづくりは熟知しています。
 奥さまが「旧宅はアパートで収納スペースがなく、子どもの勉強机を置くこともできませんでした」と、マイホームづくりに取り組んだきっかけを振り返ります。5人家族の住まいに手狭さを感じていたところ、自社で売り出す分譲販売地が奥さまの実家近くということもあり、まずは場所が決まりました。
「間取りなどにあまりこだわりを持っていない夫は『住めればいいよ』という考えで、特に希望を出しませんでした」と回想する奥さま。「私も具体的ではありませんが、子どもたちが好きなことをのびのびとできる、遊べる家にしたいと漠然と考えていました」といいます。

 そのようなときに、福岡で伝統的な日本家屋を幼い頃から身近に学んできたイー・フレス社長からプラン提案があり、話はトントン拍子に進んでいきました。木造住宅に関する知識と技術を探究し、沖縄の気候風土に合わせた施工を得意とする同社が、身内の自宅建築という好機を得て、その魅力を存分に発揮することとなります。

銘木を贅沢に使った本格派の和風建築

すみずみに至るまで銘木が美しく彩る

 日本建築の伝統様式を踏襲した意匠は、沖縄ではなかなか見ることができない端麗さを放っています。イー・フレス社長が〝上質さ〟を選択基準に買いためていた、吉野ヒノキ、吉野スギ、赤松、クスノキなどの銘木をふんだんに使い、空間のすみずみまで心をくばった技巧に学ぶことがたくさん見つかります。
 玄関ポーチから空間の流れで雨端へと続く軒天はすべて無垢材を用いて化粧で仕上げ、屋根は銅板一文字葺に。

 高い吹き抜けのあるLDKは天然の形をそのまま生かした化粧梁が3本渡り、天井は網代(あじろ)仕上げの格子を意匠で加えています。天井近くに設けた高窓から日差しが柔らかく入り、屋内に自然光を届ける設計。開閉もできるため、暑い日の通風にも有効的です。

 開放感に満たされるLDを住まいの中央に据え、その右手に和室やシアタールーム、主寝室をレイアウトして〝落ち着き〟がテーマとなる空間をまとめました。
 特にこだわり尽くした和室は「畳の上に座ったときに広がる世界観」を大切に、仏壇の膳引き(供え物を置く引き出し)を正座に合わせた高さに調整。振り返ると趣向を凝らした日本庭園が眺めることができます。

銘木を贅沢に使った本格派の和風建築

遊び心たっぷりに子どもたちを育む

 LDの左手の壁は、元気いっぱいな長男が興味あるというボルダー用ホールドを設置し、室内で遊べるアクティブな空間づくりをしています。ラジコンなどが好きで、リビングの高い勾配天井のもとでドローンを飛ばして遊べるのを心待ちにしているそうです。またLDを見下ろすロフトもお気に入りの遊び場になっているとのこと。
 ボルダー壁の向こうは子ども3人が共用する広い部屋を用意しました。
「長女はレジンでアクセサリーを手作りしたり、ネイルアートも大好き。その道具などを広げられる空間を与えたかったので、新居でかなえられて私もうれしいです」と奥さまが話してくれました。

 キッチンはLDに対面する位置に決め、子どもたちの様子を見ながら調理できる日々もまもなくです。日本庭園とは別に家庭菜園が楽しめる場所も確保し、子どもたちとトマトなどの野菜を育てる予定です。
「設計はお任せとなりましたが、結果的に満足の仕上がりです」との感想が奥さまから聞けました。

写真ギャラリー

銘木を贅沢に使った本格派の和風建築

銘木を贅沢に使った本格派の和風建築

沖縄ならではの気候風土に着目し、地域に最適な木造住宅を提案

イー・フレス株式会社
上/石松完治さん(代表取締役社長) 下/池原啓太さん(執行役営業課長)

 沖縄に本物の木造住宅を広めたいと営業活動や啓蒙に取り組んできたイー・フレス株式会社は、今年で創業18年を迎える木造専門の建築会社です。石松完治代表取締役は常に「この素材をこの箇所に選択する理由は? このように施工する根拠は?」と真摯(しんし)に問い続け、確かな知見と技術に裏打ちされた信頼できる住まいづくりに尽力してきました。

「甥の住まいとなるこの家は、当社が買いためてきた一流の銘木をふんだんに使いました」と話す石松社長は、銘木の特徴や施工法、メンテナンス法の話題になると豊富な知識を織り交ぜた説明が次から次へとあふれてきます。
「私が特に力を入れて監修したのは、外観の意匠、ポーチから玄関、〝座ったときに広がる和の世界〟を意識した日本家屋の伝統的な和室です」との説明通り、4本の磨き丸太で支えられた家構えの壮観さ、玄関部分と本体で2重になった切妻屋根の美しさ、天然石と木々を取り合わせて「和」の景色を表した端麗な庭園など、沖縄ではなかなかお目にかかれない本格派の風格が漂います。

 説明を引き継いだ池原啓太営業課長は、イー・フレスと施工会社との密な信頼関係についても触れました。
「当社は工事に携わる大工さんや職人さん、設備関連の会社と連携した『イー・フレス住まいの会』、略してES会という建築業界の協力体制を構築しています」
 おじいさまの代から続く大工職人の家に生まれた石松社長が、木造住宅の特質や専門技術について実務を積みながら身につけてきたものを、ES会の会員へ建築技術や知識を伝授・指導するかたちで仕事の質を高め、人材を育てる環境づくりを整えています。仕事や技術の安定的な供給が、引いては工期などの安定化へ結びつくウィンウィンの関係が築かれているとのことです。

「近年は政府が主導する高断熱・高気密の木造住宅もありますが、沖縄の気候は本土に比べてさらに高気温と高湿度なため、沖縄に適した木造住宅としては壁の中でも通気性を高めるなどの工夫が望ましいです」という石原課長。

 Iさんのお宅では南南東に位置するリビングの壁と北北西に位置する小屋裏収納に、対面するように明かり取りと通風性を高める高窓を設置して、温まった空気を自然の空気の流れで屋外へ逃すようにしています。また熱移動の75%を占める輻射熱の元となる屋根からの熱を防ぐため、超薄型高遮熱材「リフレクティックス」を屋根の遮熱材として標準採用。床下には断熱材を施工して冬の足元の冷たさを防ぐなど、一年を通して快適な住環境を探究しています。
 身近に接する機会が少ない本格的な日本家屋の完成見学会で、「和の世界観」を体験してみませんか。

設計・施工会社

那覇市字上間213番地1-101

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