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琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 自宅へ勝手に上がり込む人たち

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 自宅へ勝手に上がり込む人たち

週刊かふう2022年1月14日号に掲載された内容です。

自宅へ勝手に上がり込む人たち

Q:昔から、わが家のトートーメーの横には白色の香炉があり、正月やウマチーになると知らない人たちが勝手に上がり込みます。以前、怖いので鍵をかけたところ、「オバアの健康祈願に来ているのに非常識!」と逆ギレされました。線香やライターで火事にならないか、とても心配ですし、留守にできないため、おちおち家族旅行にも行けません。どうすれば白い香炉をなくして、勝手に上がり込む人たちが来なくなりますでしょうか?(読谷村・Tさん・60代・女性)

A:Tさん、自宅に知らない人が出入りするのはとても不安ですよね。多分、Tさん家のヤーシジ(家系)がムートゥヤー(本家)とかナカムートゥヤー(中本家)なのでしょうね。

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 自宅へ勝手に上がり込む人たち

《カミウコウル(神香炉)の特徴》
 Tさん家にある白色の香炉のことをカミウコウルといいます。沖縄では、台所のヒヌカンで使用したり、お葬式や初七日から四十九日までの期間に使用しています。このカミウコウルの白色という特徴は、ヒヌカン=神、お葬式・初七日~四十九日=喪中の象徴として、白色になっているといいます。

 別の理由として、トートーメーは遺族が敬いの中心となりますので小規模ですが、カミウコウルを敬う方々が、地域住民・ムンチュウ(門中)・ナカムンチュウ(中門中)が中心となるとき、その人数は膨大になりますので、トートーメーの紺色の香炉と区別するため白色の香炉を使用するといいます。ということは、勝手に上がり込む人たちは、Tさん家とヤーシジを同じにされる方々であり、全くの他人ではないということになります。

《ムンチュウなどの会議に相談する》
 このようなとき、Tさんの判断のみで「自宅へ勝手に上がらないでください」とは、なかなか申し上げにくいものですよね。といいますのも、その昔、当時の方々がいろいろと打ち合わせをされて、Tさん家にカミウコウルをウンチケー(案内)されたという状況が想像されるからです。
 そのため、個人的な問題としてとらえるより、親族の目上の方々やムンチュウ・ナカムンチュウ・郷友会などの役員の方々に相談してみるという方法も一案かと思います。当時の経緯を知る人と出会えればありがたいことですし、そのお子さまたちの世代も、まだおられるのではないでしょうか。
 結果、ケース・バイ・ケースではありますが、皆さんで寄付し合いながら、ムンチュウなどが所有している土地や建物があれば、そこにカミウコウルをウンチケーするなど、個人のご家庭だけに負担をかけない判断をされている解決方法も多々あります。

 ムンチュウなどの会議にご相談されるときは、Tさん家のご心労は至極当然のことだと思いますので、そのままの現状をお話されてみてはいかがでしょうか。ただ、このような会議は頻繁に開催されるものではないと聞きますので、今しばらくはカミウコウルのご供養を継続されることになりますが、問題解決の一歩として、決して自分お一人で抱えることなく、多くの方々のジンブンをお借りできればと思います。

《火気厳禁・ウサギムンのマナーを伝える張り紙》
 解決までの期間、お参りされる方々から見える場所に、火気厳禁・ウサギムンのお持ち帰りのマナーなど、防災面・衛生面に配慮していただく張り紙を準備していただくことも有効かもしれません。とあるご家庭のムンチュウ・グヮンス(門中のお仏壇)の壁に貼られていました言葉に、『火災の心配があるため、ウチカビはご自分で燃やさないでください。あとで私が責任を持ち、大切に燃やしますので』とありました。このように、現状のお気持ちをお伝えすることも時には大切かと思います。

 なぜ、Tさん家にムンチュウ・ナカムンチュウのカミウコウルの可能性がある白色の香炉があるのかは不明ですが、当時、Tさん家がムンチュウ・ナカムンチュウの中心的な役割を果たされるなど、大変ご貢献された、ありがたいご家庭であったことが容易に想像されます。あるいは、行き場がなくなり、ヒジュルウコウル(冷香炉)という無縁仏や無縁神になるべきところをご自宅に引き取られたのかもしれません。このような判断は、とても立派なものであり、Tさんたちご家族にあっても、ぜひ誇りをお持ちになっていただければと思います。小職も、一刻も早いご解決を心よりお念じ申し上げます。

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