琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A グソーヌニービチ(後生結婚)
週刊かふう2023年12月8日号に掲載された内容です。
グソーヌニービチ(後生結婚)
Q:
祖母が99歳で亡くなりました。祖父は29歳で亡くなっています。祖母のお墓の納骨のとき、ユタのおばさんから「オバアはウジョウバン、アランドー! グソーヌニービチドー!」と諭されました。感動のあまり泣いている人たちもいました。グソーヌニービチってなんですか?(那覇市・Oさん・30代)
A:
おばあさんは、早くにおじいさんを亡くされたのですね。そのご苦労は、はかり知れません。今回、ユタの先生のありがたいご判断を『沖縄のしきたり』を参考にしつつ、ご回答させていただきたいと思います。
イラスト/帰依剛龍
ウジョウバンとは?
ウジョウバンとは、漢字で「御門番」と書きます。最後にお亡くなりになった故人さまをお墓の中のシルヒラシ(汁減らし)という一番下の中央の場所にご安置する納骨方法のことをいいます。先にお亡くなりになった故人さまの入り口(ジョウミチ〈門道〉)をお守りする人(番人)という意味で、ジョウバン(門番)といわれています。そのお役目の故人さまを敬い、御をつけてウジョウバンともいいます。
沖縄のお墓の納骨方法には、大別して2種類あり、死亡順に納骨する場合と続柄順に納骨する場合があります。ウジョウバンは、続柄に関係なく、お亡くなりになった順番通りに納骨し、最後にお亡くなりになった故人さまが該当することから、一般的な死亡順の納骨事例であるといわれています。
ウジョウバンは、伝統的な沖縄のしきたりですが、それを行う・行わないはご遺族のご判断になります。また、例外として、最後にお亡くなりになっていてもウジョウバンを行わないこともあるといわれています。
ウジョウバンの例外
ウジョウバンの例外は、死亡順ではなく、続柄順に納骨する場合に見受けられる傾向があります。一例を申し上げますと、子が先に亡くなり、親が後で亡くなるとき、死亡順では、子の入り口を親がお守りすることになります。これが親・子という続柄順に見合わないという考え方から、地域・家庭によっては、親が亡くなっても子はウジョウバンのままにしておき、親を子のウジョウバンを越えた上段にウンチケー(案内)されることがあります。
また、故人さまの年齢(行年・享年の数え年)により、ウジョウバンを行わないことがあるといわれています。これは、トーカチユーエー(斗搔祝い〈数え88歳〉)・カジマヤー(風車祝い〈数え97歳〉)以上の故人さまなどに見受けられ、目上の方々を敬う沖縄のしきたりの象徴として、ご長寿の故人さまはウジョウバンを免除される傾向があるといわれています。今回のユタの先生からのアドバイスにある、グソーヌニービチもその選択肢の一つであると考えられます。
グソーヌニービチとは?
グソーヌニービチとは、漢字で「後生結婚」と書きます。直訳では、お亡くなりになった後の結婚とされ、冥婚といわれることもあり、中国・台湾・日本でも見受けられるしきたりといわれています。
グソーヌニービチの根拠は、『ミートゥンダー カーミーヌ チビティーチ(夫婦は後生の世界でも一緒)』という格言にもあります。グソーヌニービチは、ご夫婦の合葬・合骨ともいい、ご両名のご遺骨を一つの骨壷にご一緒にする(または、ご両名の骨壷を隣同士に並べる)納骨方法であることが知られています。
グソーヌニービチを判断するとき、納骨にあって、ご遺族へのご配慮はもちろん、沖縄のしきたりを参考にすることは言うに及びません。想像するに、納骨を担当されたユタの先生は、おばあさん・おじいさんの年齢、お墓の中の骨壷のウンチケーの状況、地域・一族のしきたりに加え、ご遺族のお考えなどを踏まえ、慎重にグソーヌニービチをご判断されたのではないかと思います。
結果、先にお亡くなりになっているおじいさんと後でお亡くなりになったおばあさんが、ご一緒に納骨されることは、Oさん・ご遺族の皆さまとしても心温まるご供養になったのではないでしょうか。
「おじいさん、おばあさん、マジュン グソーゴクラク シミソーリヨーサイ(ご一緒に成仏されてください)」。