琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 旧盆の重箱は何色？
週刊かふう2024年8月9日号に掲載された内容です。
旧盆の重箱は何色？
Q：父の十三回忌は、５年前に終わりました。重箱の中身は、十三回忌までは白色、二十五回忌からは赤色と聞いています。例えば、わが家のように十八回忌くらいですと、今年の旧盆の重箱は、十三回忌が終わっているので赤色にしてもいいのでしょうか？ 二十五回忌になっていないので白色なのでしょうか？ 中間地点で悩んでいます。（八重瀬町・Hさん・50代）
A：Hさん、ご質問ありがとうございます。実は、私もかねてより同じ疑問を持っています。日々多くの法務（お参り）の中、沖縄の皆さまは旧盆のお供えをどのようにされているのか、しっかりとデータを取らせていただきましたので、詳しくご紹介いたします。
マドゥスーコーとは
沖縄では、ご法事のことをニンチスーコー（年忌焼香）などといいます。沖縄では、一周忌・三回忌・七回忌・十三回忌・二十五回忌・三十三回忌の合計６回が多く、これに十七回忌・五十回忌などを加える県外の方々からすれば、回数が少ない印象を受けられるかもしれません。
ここで特筆すべきは、ご法事に該当しない故人さまのご命日などにも沖縄のしきたりが存在しているという点です。ここがいかにも、ウヤファーフジを大切にされる沖縄らしさではないかと思います。
このニンチ（年忌）に該当しないご法事（ご供養）のことを沖縄では、マドゥスーコー（間〈合間〉焼香）・マドゥニンチ（間年忌）などと言われます。このマドゥスーコーの重箱の色をたずねれば、Hさんへのご回答になるのではないかと考えています。
ワカスーコーとウフスーコー
沖縄のご法事は、ワカスーコー（若焼香）とウフスーコー（大焼香）に分類されます。ワカスーコーは一周忌・三回忌・七回忌・十三回忌、ウフスーコーは二十五回忌・三十三回忌となります。
このスーコーの大きな節目は十三回忌と二十五回忌にあたり、Hさんがおっしゃる通り、十三回忌までは重箱の中身（カマボコ・お餅）は白色、二十五回忌からはカマボコが紅色（あかいろ）であったり、お餅がきな粉餅（イルムーチ・色餅〈紅餅〉）であったりします。
参考までに、地域・家庭によって二十五回忌は白色のまま、三十三回忌から紅色になることもあります。
ウグヮンクトゥバ・グイスにみる重箱の色
沖縄のしきたりについての文献を拝見するとき、ウグヮンクトゥバ（御願言葉）・グイス（拝詞）に出会うことができます。例えば、十三回忌の当日では、「チューヤ ワカスーコー ジュウサンニンチ ヤイビーン（今日は十三回忌です）」、二十五回忌の当日では、「チューヤ ウフスーコー ニジュウグニンチ ヤイビーン（今日は二十五回忌です）」となります。
一方、マドゥスーコーのときは、「チューヤ グミーニチ（ご命日〈マドゥスーコー〉） ヤイビーン」といい、ワカスーコー（＝重箱は白色）、ウフスーコー（＝重箱は紅色）のように、重箱の色につながる言葉を使用していないことに気づきます。
ウグヮンクトゥバ・グイスでは、二十五回忌になり、初めてウフスーコーという言葉を使用される傾向があることから、二十五回忌未満の重箱は、すべて白色になると考えられます。これでいうと、十八回忌となるHさん家の今年の旧盆の重箱は白色ということになります。
旧盆の場合
旧盆にはミーボン（新盆〈初盆〉）という言葉があり、沖縄では古くから三回忌を終えるまでは喪中であるとの考え方があります。現代では、生活スタイルの変化・簡素化も手伝って、一周忌で喪中を終える節目とする考え方もあります。
三回忌（一周忌）を終えないうちのミーボンでは、重箱などのウサギムン（お供え物）の色は白色であり、それを過ぎれば紅色にしても差し支えないという寛容なしきたりが受け継がれています。
特に、トートーメーに三十三回忌を終えられているウヤファーフジがご安置されているとき、その方々にいつまでも喪中の白色をお供えするのはしきたりにそぐわないとの考え方から、ミーボンが終われば、重箱は紅色に戻すとの考え方もあります。
今回のご回答としましては、十八回忌の旧盆の場合、重箱は白色でも紅色でも双方の考え方が沖縄のしきたりにはあることと、Hさん家のトートーメーの現状を考慮してご判断されてみてはいかがでしょうか？
もしも、ご不明なとき、判断に迷われるときは、重箱をタジューバコのチュクン（２組・４箱）でお供えされるようでしたら、ハンクン（１組・２箱）は白色、もう半分は紅色にする折衷案もありますので、参考になさっていただければと思います。
イラスト／帰依剛龍
