新着 不動産相続Q&A File.10 自筆証書遺言書保管制度
週刊かふう2022年12月23日号に掲載された内容です。
自筆証書遺言書保管制度
近年、相続に関する法改正が多く行われています。今回は「自筆証書遺言書保管制度」について、区長と青年会会長のおしゃべりで解説します。
【区長】 もう今年も終わりだね~。
【青年会会長(以下、青年会)】年を取るにつれて一年が終わるのが早く感じますね。
【区長】 そして、私の人生もいつかは終わるのだよ……(しみじみ)。
【青年会】「人生の価値は終わり方だろう♪」って、僕の好きな歌手も歌ってました。
【区長】 なかなか良いことを言うじゃないか。
【青年会】 ヨルシカ※の『藍二乗』という歌です。
【区長】 夜の鹿?
【青年会】 (苦笑してスルー)さて『終活』という言葉はすっかり普及した感がありますね。
【区長】 そろそろ遺言を書いたほうがよいとは言われるけど……
【青年会】 なかなか人に相談しにくいかもしれないですね。
【区長】 最低限のことは、遺言書に書いておこうかとも思ってるんだが……
【青年会】 それならグッドタイミングです! 2年ほど前に法務局で自筆の遺言書を預かってもらえる制度がスタートしているんですよ。自筆証書遺言書保管制度というらしいです。
【区長】 ほう!
【青年会】 自筆証書遺言は亡くなった後に家庭裁判所での検認手続が必要ですが、保管制度ではその検認手続が不要になります。
【区長】 ほう、ほう!(ほう二乗)
【青年会】 そして、遺言書を見つけた人による破棄や隠匿、改ざんの恐れもありません。
【区長】 法務局に原本が保管されているからか! その二つのメリットは、公証人が作成して公証役場で保管される公正証書遺言と同じだね。
【青年会】 そうなんですが、保管制度では自筆証書遺言の外形的なチェックのみが受けられるということに注意が必要です。法務局は遺言内容の有効性までは確認しません。一方、公正証書遺言は、遺言者本人と面談したうえで専門家である公証人が作成するので、遺言書が無効になる可能性は低くなりますね。
【区長】 公正証書遺言のメリットは変わらないということか。
【青年会】 ただ、この保管制度だけのメリットがあるんです。それは、亡くなった後の通知制度ですね。
【区長】 ほう、ほう、ほう!(三乗)
【青年会】 遺言者が亡くなったあとに、相続人のうちの一人が遺言書保管所で遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けると、相続人全員に遺言書が保管されている旨のお知らせが届くんです。また、遺言者が希望すれば、自分が死亡したときに通知されるよう、特定の対象者一人を指定することもできます。
【区長】 遺言書を作ったことを誰にも知られたくない。でも、黙ったままだと遺言書が発見されないかもしれない……
【青年会】 遺言書を保管するだけでなく、従来の自筆証書遺言で生じていた問題を手当てしているのが、この新制度なんです。
【区長】 今日は、私が教えてもらう立場になったね。やけに詳しいじゃないか?
【青年会】 いや~、ぜひ区長には遺言を残してほしくて。
【区長】 なんか嫌な予感がするな~。
【青年会】「現金・預貯金のすべてを私(青年会長)に遺贈する。遺言執行者を私にする」という内容でどうですか? あっ、不動産はいらないですよ。
【区長】 断じて断る!
<法務省民事局発行「遺言書保管申請ガイドブック」P4より引用>
※ 2017年結成。サウンドクリエーターn-bunaとボーカルsuisによる日本の男女2人組のロックバンド。代表作に「言って。」「ただ君に晴れ」「花に亡霊」などがある。
司法書士 幸良 和也(こうら かずや)
令和2年度司法書士試験合格
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