新着 不動産相続Q&A File.32 「戸籍の収集」について
週刊かふう2024年10月25日号に掲載された内容です。
「戸籍の収集」について
不動産相続について司法書士の経験と目線から実践的なアドバイスや解決策を提供します。今回は、相続に必要不可欠な「戸籍の収集」について、区長と青年会会長のユンタクで解説します。
【青年会会長(以下、青年会)】 区長、戸籍はどこで取ればいいんでしょうか?
【区長】君はいつも突然だな。で、誰の戸籍が必要なんだ。
【青年会】 オジイ名義の預金の解約と土地の相続登記に戸籍が必要と言われたんですが、どうすればいいのか分からないんです。
【区長】なら、今日は戸籍の取り方を教えよう。その前に相続手続きになぜ戸籍が必要なのかの説明からだな。
【青年会】(今日も長くなりそうだな)
【区長】なんか言ったか?
【青年会】 いえ、な~んにも言ってません……
【区長】まず、相続手続きでは最初に3つの確認が必要になる。
① オジイが亡くなったという事実の確認
② 被相続人(オジイ)の相続人が誰なのかの確認
③ 相続人が生存しているかの確認
なぜかというと、銀行は預金が誰のものかを把握しているが、口座名義人である被相続人が亡くなったことや誰が相続人かは分からないからなんだ。
【青年会】 確かに! 不動産の相続登記にしても同じですね。
【区長】では、具体的に戸籍謄本を集めよう。
①の確認 最後の本籍地の役所で(死亡と記載がある)戸籍謄本
②の確認 出生から死亡までの改製原戸籍等
【青年会】ちょっと待ってください、戸籍謄本は1人ひとつじゃないんですか。
【区長 】戸籍謄本は戸籍法という法律に基づいて作製されているんだが、戸籍法が改正されるたびに新しく作り直される。しかし、作り直される前の戸籍謄本(「改製原戸籍」という)の内容のすべてが新しい戸籍謄本には記載されていないので、作り直される前の古い戸籍謄本を出生まで順番にさかのぼって揃えないと婚姻関係や子供のことが分からないんだ。
【青年会】 そうなると全然知らない兄弟とかが出てくる場合もありそうですね。
【区長】 他にも、本籍地を違う市町村に移すと(転籍)、そのたびに新しく戸籍が作り直されるのでさらに取得する戸籍が増えることになる。
【青年会】 戸籍の収集って大変な作業なんですね。
【区長】これまではそうだったが、令和6年3月1日から『広域交付制度』が始まって本籍地以外の市区町村の窓口で戸籍謄本を取得することができるようになった。
【青年会】すごく便利になったじゃないですか。
【区長】 ただし、広域交付で請求できる人は本人、配偶者、直系尊属(本人の父母、祖父母)直系卑属(本人の子、孫)に限られ兄弟姉妹は請求できない。また、コンピューター化されていない戸籍謄本や戸籍抄本、戸籍の附票は請求できない。
【青年会】ぼくはオジイの孫だから広域交付で請求できますね。じゃあ早速、最寄りの役所に行ってきま~す。
【区長】まだ説明は終わってないんだがな~
※現在の戸籍謄本は「戸籍全部事項証明書」、戸籍抄本は「戸籍個人事項証明書」が正式名称です。