よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.16
週刊かふう2019年2月22日号に掲載された内容です。
子供に財産を平等に残したい
ある年齢になれば、子供への相続準備をしなくてはと考える方が多くいらっしゃると思います。子供が何人もいるご家庭だと、一人一人に平等に相続させたいものです。そこで今回は、相続させる際の留意点や子供に伝える際のタイミングについてお話しいたします。
Q.3人の子供にできるだけ平等に相続させたいと考えております。
私は建設業を営んでおりますが、そろそろ相続の事が気になる年齢となりました。私の所有する土地(自宅、会社へ賃貸している土地、軍用地)を3人の子供にできるだけ平等に相続させたいと考えております。相続させる際の留意点及び子供たちへ伝えるタイミングについてご教示願います。
A.一番重要なのは財産をいかにスムーズに承継させるかということです。
親の立場からすると子供はできるだけ平等に扱いたいとの気持ちから、ご相談者様のように財産も平等に相続させたいと考える方は多いものです。一番重要なのは財産をいかにスムーズに承継させるかということです。
しかし、不動産の評価については、固定資産税評価、相続税評価、時価があり何を基準とするか等の問題もある事から、きっちり平等に分割することは容易ではありません。できるだけ平等にするためには共有で相続させる方法もありますが、将来のトラブルの原因ともなりますので、特に留意が必要です。
お子様へ伝えるタイミングを検討したり、できるだけ平等に相続を行う準備として、財産リストを作成し、不動産の状況(すぐに活用できるのか、収入の有無、抵当権の設定等)を把握することが大切です。
解説1 平等に残すための留意点
⑴平等に相続させたい
将来子供間でのトラブルを避けるため、子供たちに平等に残したいとの思いはどの親も同じであると考えます。預金のような分割が容易な財産もあれば、不動産のように分割が困難な財産または抵当権の設定により活用が困難な財産もあります。
⑵共有のリスク
前述したように不動産の分割が困難であることから、やむを得ず共有によらざるを得ないケースも想定されますが、共有についてのデメリットを十分に認識した上で対応する必要があります。
「とりあえず共有」と考えている方もおりますが、共有にすることは問題の先送りになりかねません。
⑶代償分割
相続財産をできるだけ平等に分割する方法の一つとして代償分割があります。これは、特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に対して代償金を支払う遺産分割の方法です。この場合、代償金をいくらにするか支払回数をどうするかの協議が必要となります。
⑷財産リストについて
誰にどの財産を相続させるかは、子供に喧嘩をさせたくないとの思いから最も悩ましい問題であり、なかなか結論が出ないのではないでしょうか。
財産リスト(預金、株式等も含む)を作成することにより、遺産分割の検討がスムーズに進むものと思います。特に時価の把握については専門性を有することから、不動産会社へご相談することをおすすめします。
解説2 子供へ伝えるタイミング
相続問題を子供の立場から切り出すと「親の財産を当てにしていると思われたくない」、一方で親の立場からは「子供の自立を妨げるのではないか」などの理由で、ずるずると先送りされ親の思いが子供へ伝わらないケースも多いのではないでしょうか。
お元気なうちに財産リストを作成し、例えば子供が結婚または孫が生まれたタイミングでお話しすると決めておくのも一つの方法ではないでしょうか。また、遺言書の作成によりご自分の思いを残すのもよいでしょう。
まとめ
「うちの子供は大丈夫」、「うちは財産が少ないから」等の声を聞きますが、親の思いが伝えられなかったが故にトラブルを招く場合も少なくないものと考えます。
相続においては、どうしても相続税の負担が気になるため節税対策に関心が集中するものです。そのため、やみくもに相続税対策を実行しているケースも見受けられますので、くれぐれも相続税対策と相続対策は別の問題であることを十分に認識した上で、円満な相続を行っていただきたいと思います。